大熱狂のNFT(非代替性トークン)ですが、実は、この数か月でそのマネーゲームに落ち着きが見え始めています。ではいつまで続くのか? イーサリアムマネーゲームを維持し、手堅く投資・運用するために注目すべきNFTのトレンドと実情についてご紹介します。
イーサリアムNFTプラットフォームを考えるための2つのポイント
NFTのGoogle検索ボリュームは減少傾向
イーサリアムのNFTプラットフォームのトレンドと実情を考えるために、2つのポイントがあります。まず把握しておきたいのは、Google検索ボリュームです。NFTというキーワードが検索された回数を知ることで、その関心度がわかるからです。
以下のグラフが世界におけるNFTのGoogle検索ボリュームです。
かつて、NFTの関心度は、世界的にみて2017年のICO(イニシャル・コイン・オファリング。資金調達をしたい個人や企業、プロジェクトなどがトークンやコインと呼ばれる独自の仮想通貨を発行し、それを広く投資家に販売することで資金を集めること)ブームに匹敵していました。ところが、現在は、約60%減少しています(6月26日執筆時現在)。
日本だけのデータでは、どうでしょう?
ピーク時の約半分です(6月26日執筆時現在)。
これは、一体なにを意味するのでしょうか?
単にNFTについて知る人が増え、検索する必要がなくなったということでしょうか。しかし、NFTについてまだなじみがない日本で、そう結論づけるのは少し難しいでしょう。ではNFTの注目度が薄れてしまったということなのでしょうか。
そこで次にチェックしたいのが、NFTの月間取引高です。ブロックチェーン・仮想通貨・クリプト業界に特化したニュースサイトThe Blockのデータによると、イーサリアムのNFTプラットフォームの週間取引量は、ピーク時の2021年2月21日の1億982万ドルから2551万ドルに落ち込んでいます(6月26日執筆時現在)。
ただしトランザクション数(Webサイトでユーザーが商品を選択してカートに入れ、購入完了するまでの一連の流れを経た人数)とユーザー数はほぼ安定し、NBA TopShotの月間平均ユーザー数は40万人となっています。
とはいえ、どうやら初期の大ブームは過ぎ去ったように見えます。
イーサリアムマネーゲームを維持するために
では、イーサリアムマネーゲームを維持するためには、何が必要なのでしょうか。
そこで押さえておきたいことは、2020年にDapper LabsがCryptoKittiesに続いてTopShopを発表して以来、イーサリアム上では何百もの新しい企業や団体、何千ものクリエイターやコレクターが参入してきたという事実です。2021年6月には、IOC(国際オリンピック委員会)などの国際団体もNFTサービスの販売を開始しました。
ブームに陰りが見えたとはいえ、NFTは、デジタルコンテンツを介し、インターネット業界とクリエイティブ業界との新しい融合型を示しました。つまり、広告やストリーミングに頼らなくても、リアルなコミュニティやファンの心を捉えることで、新たな経済市場と持続可能なモデルを生み出したのです。
さらに、ブロックチェーンを活用することで、メディアや金融関連企業の性質が変わるという中核的な考えは、実際に実現し、成功し続けています。例えば、ブロックチェーン上でトークンを発行するという資金調達法とDeFi(分散型金融)採用の線引きを外すことで、ICO時代の幻影を超えた、より地に足のついた各種金融サービスもかなうでしょう。
例えば、NFTを特定のアドレスに送信してロックしたり、NFTを担保にしてNFTに交換可能なトークンを新たに発行したりと、イーサリアムの相互運用性があるため、このような金融構造を迅速に構築することができます。これは、現実の世界ではなかなか実現できないことです。分散型金融の世界では、そのようなことが数か月で構築できるのです。
つまり、古い金融構造と新しい金融構造の垣根を超えることで、より実体が伴う形でのイーサリアムマネーゲームがかなうのです。
そこで、イーサリアムマネーゲームを維持するためには、中長期的な視点を持って、DeFiを活用しながら将来性が高いNFTを見極め、分散投資することが肝になります。
メディア芸術とNFTの関係性
イーサリアムにおいて、その最終局面は、NFTです。CryptoPunksが5万ドルやそれ以上の価値を持ち続けているのは、イーサリアムマネーゲームの参加者における社会的・文化的象徴だからです。
例えば、Beepleの作品に約7000万ドル(約75億円)もの大金を費やした人は誰でしょう? 落札者は、NFTプロダクションであり世界最大のNFTファンドである「Metapurse」の創設者・Metakovan(メタコバン)です。
ツィッター創業者のジャック・ドーシーCEOの初ツィートを291万ドル(約3億1700万円)で落札したのも、ブロックチェーン企業のCEOです。
つまりメタバース(仮想空間上にある現実世界を映したミラーワールド)を現実世界に引き込むのは、イーサリアムのマネーゲームで十分な利益を得た人たちです。膨大な価格でNFT化されたメディア芸術を買い取ることで、彼らは、別次元でマネーゲームをプレイしているのだと周囲にアピールしているのです。
古いアートとNFTという新しいアートのトレンド
このような状況を踏まえたうえで、対して彼らのマネーゲームを冷静に見据えたうえで、手堅く投資・運用したい私たちにとって、今後のNFTとはどうあるものなのでしょう。その参考になるトレンドのひとつとして、古いアート(既存の芸術)とNFT化された新しいアート(新興芸術)の動向があります。
古い世界は一般的に、新しい世界に引き込まれて利益を得ることができます。これは芸術分野においても同じ。つまり、アート、音楽、映画などのメディア形態をとる、大規模な既存オーナーや企業は、NFTマーケットを大々的に開拓していくでしょう。
メディア企業とは、法令遵守が重視される金融機関と異なり、元来クリエイティブな存在です。
彼らがブロックチェーン技術に取り組むことで、NFTの意味や、アートや音楽というブランド体験全体においてNFTがどのような価値を生み出すのかについて、新たな解釈が生まれる可能性が高いです。そこでメディア企業は、技術が及ぶ範囲を狭める方法を問うのではなく、広げる方法を模索し、提案していくでしょう。
現在、イーサリアム以外のNFTがさほど人気を博していないこともあり、信頼できる所有権システムを生成するための十分な分散化が行われていません。例えばDapper Labsが消滅し、NBA TopShotを動かすソフトウェアで、民間で運営されているFlowのノードがすべてオフラインになったとき、あなたが所有するデジタルオブジェクトがどうなるのかは不明です。これは、バイナンスが独自にローンチした、Binance Smart Chainについても同様です。
それに対して、テゾスやHic et Nuncプロジェクトでは、分散型ファイルシステムのIPFS(Inter Planetary File System)が利用されています。IPFSは、Flowに比べ、耐障害性が高い設計になっています。専門的な話になりますが、IPFSはネットワークの各参加者がデータを保持し、参加者同士がデータの提供や要求を行うという分散型のネットワークモデルだからです(※)。
端的にいえば、IPFSがNFTを担保するという答えになるのかもしれません。IPFSを補完する分散型ファイルシステムのFilecoinの時価総額が100億ドルにもなるのは、このためかもしれません(※)。
美術品を所有することは、単なる美を愛でるだけではなく、リスクとリターンのバランスを取るための投資戦略のアセットアロケーション(資産配分)のひとつと考えられます。
そこで、高いパフォーマンスを目指しつつも、手堅く資産を守るためにも、古いアートと新しいアートの両方が、既存の金融システムだけでなく、新興の金融システムをも活用できることが期待されます。
例えば、金融界では、このようなアートやメディア企業の動きを受けて、NFTベースの資産をパッケージ化し、ポートフォリオ管理システムや慣れ親しんだ資産配分に統合する金融システムを構築する必要があります。
まとめ
クリエイティブな世界において、リアルとデジタルの境はますます薄れています。それは、今後の金融の在り方も同じ。NFTを活用した斬新なユーザー体験のために、ガバナンストークンや参加型トークンなどの形をとりながら分散型金融が活用されていくでしょう。空言のブームから落ち着きを見せ始めたNFTですが、企業やサービスの性質を変え、芸術分野でも期待を集めます。新しい金融システムに後押しされながら、引き続き投資や資産運用の高い見込みがある市場です。NFTや暗号資産など、ブロックチェーン技術にご興味のある方は当社に是非ご連絡ください。