楽天は8月30日、ブロックチェーン技術を活用した NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)の事業に国内で参入することを発表しました。2022年春に「Rakuten NFT」の提供を開始する予定です。
この記事では、Rakuten NFTの特徴や、楽天以外の国内大手企業が運営するNFT事業について解説します。
IPホルダーが喜ぶ「Rakuten NFT」
Rakuten NFTは、次の2つの要素を併せ持ったプラットフォームです。
- スポーツや音楽、アニメをはじめとするエンターテインメントなど、さまざまな分野におけるNFTを取引できるマーケットプレイス
- IPホルダーがワンストップで、NFTの発行や販売のサイト構築ができる独自プラットフォーム
Rakuten NFTでの決済には楽天IDを使用可能で、ブロックチェーンに関する専門的知見がなくても、IPホルダーは自身で技術開発をすることなくNFTを発行・流通できるとしています。こうした特徴を持つRakuten NFTは、IPホルダーが喜ぶプラットフォームといえるでしょう。
楽天ポイントもたまるNFTマーケットプレイス
Rakuten NFTでの取引を通じて、今後ユーザーが楽天ポイントをためたり使ったりすることも可能になるとしています。加えて、楽天が運営する他のサービスで商品を購入したり使用条件を満たしたりするとNFTを景品として獲得できるなど、さまざまなサービスと連動したプラットフォームとしても活用できるようになる予定です。
楽天はRakuten NFTを発表する以前から、ブロックチェーン技術に関する事業に積極的に投資してきています。2016年8月、ブロックチェーン技術に特化した研究開発組織「楽天ブロックチェーン・ラボ」を開設し、2019年8月からは楽天ウォレット株式会社で暗号資産における現物取引サービスを提供してきました。
これまでの取り組みで培った技術を最大限に利用して今回NFT事業に参入することで、比較的狭いコミュニティで流通しているNFTの市場環境を変化させ、幅広いユーザーがNFTを保有することに価値を感じられるように「NFT市場の民主化」を目指す意向です。
他にもある日本のNFTマーケットプレイス
楽天だけでなく、日本の大手企業が続々とNFT市場に参入しています。今回は、大手企業が展開する4つのNFT事業をご紹介します。
メルカリのメルコイン
メルカリの子会社である株式会社メルコインは、一般社団法人日本暗号資産ビジネス協会(以下、JCBA)に7月1日に入会したことを発表しました。メルコインは、暗号資産やブロックチェーンに関するサービスの企画・開発を行うことを目的に、4月28日に設立された企業です。今後は次のような暗号資産事業を展開し、金融サービスをより簡単に利用できる環境を目指すとしています。
- メルカリにおける売上金のビットコインでの受取り機能の提供
- メルペイにおける決済・送金機能にとどまらない与信や暗号資産・資産運用の機能の提供
JCBAへの入会を通じ、今後は暗号資産やブロックチェーンの領域での各種ルール整備や利用者増加など、業界の発展に貢献していく意向です。また、暗号資産やブロックチェーンの領域に関する新たな挑戦を通じて、メルカリグループの新たな柱となりうる事業の企画・開発を目指すとしています。
LINE Blockchain
LINE Blockchainは、LINEが独自に開発したブロックチェーンです。LINEの子会社で暗号資産事業およびブロックチェーン関連事業を展開するLVC株式会社は、LINEのデジタルアセット管理ウォレット「LINE BITMAX Wallet」において、LINE Blockchainを基盤としたNFTアイテムの取引ができる「NFTマーケットβ」の提供を6月30日より開始しました。
LINE BITMAX Walletには次のような特徴があります。
- ブロックチェーンサービス内のトークンやアイテムなどのデジタル資産をまとめて管理でき、ユーザーは1つのウォレットでさまざまなブロックチェーンサービスを利用できる
- LINEアカウントさえ持っていればLINE BITMAX Walletをすぐに作成できる
- LINEアカウントに紐づいているため、LINEの友だち同士でデジタル資産を送り合ったり交換したりできる
また、イーサリアムチェーンなどでは、NFTアイテムの取引時に取引利用料である「ガス代」が発生しますが、LINE Blockchainでは取引利用料がかかりません。なお、決済に利用できる暗号資産はLINEの独自暗号資産「LINK」です。
ヤフー
LINE Blockchainは、LINEグループだけでなく他社からも利用されています。LINE Blockchainを利用してNFT事業を展開する大手企業として挙げられるのがヤフーです。ヤフーは7月21日、ネットオークション・フリマアプリ「ヤフオク!」にてNFT取引を2021年冬から開始することを発表しました。ヤフーはLINEの子会社であるLVCと連携し、LINE Blockchainを活用するとしています。ヤフオク!でNFT売買する際の決済方法はまだ決まっていませんが、取引にはLINE BITMAX Walletを利用するとのことです。
一部のNFTマーケットプレイスは、NFTを作成したクリエイター本人が販売した後、購入者が別の購入者に再販できる「二次流通機能」を持っています。そして、ヤフオク!のようなオークションサイトは、NFTが有するこの二次流通機能と相性が良いと考えられており、ヤフーは今後NFTの二次流通市場拡大を目指しているようです。
Adam byGMO
GMOインターネットグループのGMOフィナンシャルホールディングス株式会社の連結会社であるGMOアダム株式会社は、NFTマーケットプレイス「Adam byGMO」β版の提供を8月31日に開始しました。Adam byGMOには次のような特徴があると公表しています。
- イーサリアムによる決済のほか、口座振り込みやクレジットカード払いに対応するなど、多様な決済手段を持つ
- 日本円での支払いにも対応しているため、暗号資産の取り扱いに慣れていなくてもNFTコンテンツを購入できる
- 作品が購入されるたびに、NFTクリエイターにロイヤリティが還元される仕組みとなっているため、Adam byGMOでNFTを購入することでクリエイターを支援できる
- 画像や音楽、動画など、NFTの保有者のみが視聴できる保有者限定コンテンツを提供している
β版の提供開始時点で、立ち技格闘技・K-1やYouTuber・ヒカルさんのコンテンツ、日本国内の漫画家・イラストレーター総勢36名による作品1,145点などが出品されました。
まとめ
知名度の高い日本の大手企業がNFT市場に参入することで、これまでNFT取引をしたことがない人にとっての参加ハードルが下がるでしょう。現時点ではOpenSeaなどの海外発のNFTマーケットプレイスの利用者の方がまだまだ多くなっています。しかし、今後楽天をはじめとする企業が、既存の大手NFTマーケットプレイスとの差別化をさらに図れば、日本発のNFTマーケットプレイスが主流になる日がくるかもしれません。
今後もこちらでは、NFT関連の役立つ情報をお届けしていきます。NFTや暗号資産など、ブロックチェーン技術にご興味のある方は当社に是非ご連絡ください。