最近、ニュースサイトでデジタルアートが高値で売買されたというニュースをよく聞くようになりました。デジタルアートを、仮想通貨にも使われているブロックチェーン技術を使ったNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)とすることで、手軽に売買ができるようになった。と、いうことですが、ブロックチェーンとかNFTという言葉はよく耳にしますが、まだまだ聞きなれない言葉なのではないでしょうか。難しい言葉を使わずに解説します。
ブロックチェーン、 NFTとは?
簡単(少し乱暴に)に表現するならば、ブロックチェーンは改ざん不可能なデータベースであり、NFTは所有していることを表す証明書と言うことができます。NFTはブロックチェーン上にありますので、組み合わせることで改ざんされない証明書になります。
この改ざんされないNFTに、デジタルアートと所有者の情報を関連付けて、ブロックチェーンに記録しています。ブロックチェーンの決まりごとに従って取引することで、所有者を移転することができます。ブロックチェーンでは取引の記録が順次追記されるので、取引の履歴をたどることができます。なお、NFTの取引には仮想通貨を使います。
これらにより、世界中の誰とでも安心してデジタルアートの売買ができるようになります。
ブロックチェーン技術の歴史
ブロックチェーン技術は生まれてまだ10年程の技術です。2008年に Satoshi Nakamoto が書いた論文により 有名なビットコインが生まれました。ビットコインは、ブロックチェーン技術を実現した第1世代のブロックチェーンとされています。この世代では中央集権的な管理組織の代わりに暗号技術によって通貨の直接取引が可能となりました。
現在は 第1世代を元に拡張した第2世代と称されています。通貨とは異なり代替できない価値(NFT)の交換や交換の速度(スケーラビリティ)の向上がなされています。これにより、デジタルアートやツィッター、ゲームアイテムに限らずサプライチェーンのトレーサビリティ実現、プロセスの自動化、ヘルスケアへの応用、電子投票システム等が実現されつつあります。
さらに、ブロックチェーン技術は、高信頼な社会基盤となるべく、より便利に安全に使い続けられる技術となるための研究が続いています。規模の拡大に対するスケーラビリティの確保、公開すべきでない個人データの扱い、量子計算機時代への対応等です。
ブロックチェーン技術は新しい技術であるので、対応する商習慣や社会制度の見直しなども必要になっています。
NFTの歴史
NFTが有名になったのは 2017年の終わりごろ、デジタル版の猫を育成・取引するアプリ「Crypto Kitties(クリプトキティーズ)」によるものでした。このゲームでは育成した猫をかけ合わせて生まれてくる子猫をマーケットに出し、イーサリアムに交換します。時には、突然変異によって希少性のある子猫が生まれてくることがあります。希少性のある子猫は高値で取引されますので、投資性を持ったゲームであるとも言えます。2018年には600ETH(当時約1900万円)での取引が伝えられています。
2018年頃には日本企業の開発したゲーム「My Crypto Heroes(マイクリプトヒーローズ)」がヒットしています。2019年8月には、世界No1のユーザー数、トランザクション数を記録しています。
現在のNFTブームはアメリカプロバスケットボールのハイライトシーンが収められたデジタルトレーディングカード「NBA Top Shot(NBAトップショット)」が火をつけました。取引高はローンチから1年足らずの間で7億ドルを超えたそうです。
この他に、アートのオークションといえば サザビーズ, クリスティーズが有名ですが、これらのオークションでもNFT化されたアートが取引されるようになってきています。
Beeple のコラージュ作品 が “Everydays: The First 5,000 Days” が6935万ドル(約75億円)で落札されたニュースは耳にしたことがあることでしょう。
日本のNFT市場
NFTマーケットプレイスとして世界的に有名なのは「opensea」ですが、日本でもNFTの取引のできるマーケットが続々と立ち上がっています。例えば、「TOKENLINK」,「coincheck NFT」, 「nanakusa」などが挙げられます。さらに 2021年6月には世界最大の仮想通貨取引所と評されるバイナンスから「バイナンス NFT 」がローンチされます。また、8月にはGMOインターネットグループより「Adam by GMO」がローンチされる予定です。LINE, メルカリもサービス提供を表明しています。
世界に追いつけ追い越せと言わんばかりに、2021年になってから続々とデジタルコンテンツをNFT化して流通させるマーケットプレイスがローンチされています。
マーケットプレイスのローンチだけでなく、国内アーティストのNFTも高額で落札されています。2021年4月には、世界的VRアーティストのせきぐちあいみさんの「Alternate dimension 幻想絢爛」が69.697ETH(約1,300万円)で落札されました。
これからもアーティストたちの活躍を期待します。
NFTの今後
ネガティブ
活況を呈しているNFT業界ですが、NFTの取引には以下のような懸念があります。
NFTに記録されるのはデジタル化されたアートの置き場所のみであって、デジタルデータそのものではありません。デジタルデータそのものは、NFTとは別に、特定のサーバ, クラウドで保管されている場合や、IPFSと呼ばれるP2P分散ストレージに置かれる場合があります。NFT購入した後も、これらデータの管理が永続的になされることを期待しますが、NFTの売買にはそこまでの制約はありません。別途、契約事項ということになります。
著作権の移転にも解釈のずれが発生する恐れがあります。著作権の移転は当事者間の意思表示のみによって成立するので、NFTを買っただけで著作権のすべてが得られるというわけではありません。
これらの懸念は、NFT化してデジタルコンテンツを取引する。という技術的な側面とは別の取引ルールが定まっていないことが原因と考えられます。新しいサービスが立ち上がっていく時の端境期ゆえの混乱といえるでしょう。充分注意してNFT取引をすることが必要です。
ポジティブ
NFTはこれまで資産として扱うことのできなかったデジタルアートなどのデジタルコンテンツを資産化し、取引ができる可能性をもたらしたことに意味があります。複製のできるデジタルコンテンツに所有する価値を意味付けたことは大きな転換だといえるでしょう。
また、NFT取引では現物での取引では出来なかった再販売時に元の所有者へロイヤリティの還元をすることもできるようになります。クリエイターが販売しておしまいではなく、人気が高まり再販売される際にも販価の一部がクリエイターの元に届く仕組みが構築できるようになります。これにより、単に投機的にコンテンツの取引がされるだけでなく、市場での評価がクリエイターへ還元され、新しい作品の製作に期待が持てます。
ブロックチェーンは日本というよりも世界中に張り巡らされたネットワークです。NFT化したコンテンツは世界中の人が取引することができます。簡単に世界中の人々と対話ができるようになる。とも考えられます。
まとめ
ブロックチェーン技術もNFTの取引もまだまだ若い技術です。デジタルの世界で価値の取引が行われることにまだまだ慣れていないのが現実でありますが、既存の習慣や社会制度に変革をもたらす技術であることには間違いありません。インターネットが人々をつなぐことに貢献してきたように、次は、ブロックチェーンが新たな価値の交換の仕組みになるかもしれません。ブロックチェーン技術の発展は世界中の開発者たちの実証実験により進められています。より良い世の中になるよう発展を期待します。
NFTや暗号資産など、ブロックチェーン技術にご興味のある方は当社に是非ご連絡ください。