大手ECプラットフォームのShopify(ショッピファイ)は7月27日、NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)の販売機能を追加することを発表しました。この記事では、ShopifyでのNFT取引の特徴や実際に販売されたNFT、NFT市場に次々と参入するECプラットフォームについて解説します。
Shopifyは世界有数のECプラットフォーム
そもそもShopifyとは世界有数のECプラットフォームで、2020年時点で世界175カ国以上で100万以上の店舗に利用されています。Shopifyの魅力は、サブスクリプション型のサービスモデルによりECサイトを簡単に開設できる点です。これまでECサイトを開設するには、自社でサーバーを用意してネットワークを管理する必要がありました。一方でShopifyではその必要がなく、管理画面で設定をするだけでECサイトを作成できます。
エンジニアやデザイナーに依頼しなくても一定の品質を満たすデザインを設計でき、サードパーティの開発者が公開しているアプリを導入すれば、必要な機能を随時補える点も魅力といえるでしょう。また、英語だけでなく日本語にも対応しているため日本のユーザーでも使いやすく、海外配送も簡単にできることから越境ECにも向いているのが特徴です。
現実と仮想空間の両方へ進出、NFTの販売も開始!
このように多くの国で利用されているShopifyは、現実世界だけでなく仮想空間にも進出し、NFTの販売も開始しました。従来のNFT取引では、特定のサードパーティのNFTマーケットプレイスで取引することを決定するとレイアウトなどを自由に変更できず、出品者の世界観や価値観を反映できないという課題がありました。管理画面で設定を行うだけでECサイトをデザインできるShopifyは、こうした課題を解決でき、さらに出品者と購入者の関係を強化できると考えられています。
ShopifyのCEOであるHarley Finkelstein氏は、「今年は、1分間だけでもインターネットを利用すれば、NFTに関する多くの情報を目にしたはずです。自分のストアでNFTを直接販売することを容易にした事例の一つが、シカゴ・ブルズのNFTストアです」とツイッターでつづりました。
さらにFinkelstein氏は、「当社がこの機能を提供する前は、NFTの出品者はサードパーティのNFTマーケットプレイスを通じて販売しなければならず、販売や顧客との関係を制御できませんでした。今回のNFT販売機能の追加により、出品者が制御できるようになり、購入者の希望を満たせます」とコメントしています。
シカゴ・ブルズが6種類のNFTを販売
アメリカイリノイ州に本拠を置くNBAチームのシカゴ・ブルズは、Shopifyが追加したこの機能を最初に使用し、独自のNFTオンラインストアを立ち上げました。シカゴ・ブルズのファンに対して公式ライセンスのNFTコレクションを販売するのは初めてとのことです。今回販売されたNFTは、1990年代にチームが獲得した6つのNBAチャンピオンシップに焦点を当てたもので、合計567枚しかありません。
7月26日に販売が開始された「1991年チャンピオンリング(1991 Championship Ring)」を皮切りに、その後5日間で1992・1993・1996・1997・1998年の各タイトルのNFTを順番に販売しました。購入したNFTを開封すると、ランダムなシリアルナンバーと、3段階のいずれかの希少性が明らかになったとのことです。
今回のNFTコレクションはDapper Labsの独自ブロックチェーンであるFlow上で発行されたといわれており、NFTを購入したユーザーには、他にはない体験やその他の賞品を手に入れるチャンスも与えられました。Dapper Labsは、NFT市場の多くのシェアを占める人気ブロックチェーンゲームNBA Top Shotを運営しています。なお、今後Shopifyで販売されるすべてのNFTがFlow上で発行されるかは明かされていないようです。
次々とNFTに参入するECプラットフォーム
Shopifyだけでなく、大手ECプラットフォームがNFT市場に参入する動きを見せています。その例として挙げられるのが、楽天とeBay(イーベイ)です。
2022年春にNFT取引を開始予定の楽天
大手ECプラットフォームの楽天は2021年8月、ブロックチェーン技術を活用したNFT事業に国内で参入することを発表しました。 次の2つの特徴を併せ持つ「Rakuten NFT」の提供を2022年春に開始する予定です。
- スポーツや音楽、アニメをはじめとするエンターテインメントなど、さまざまな分野におけるNFTを取引できるマーケットプレイス
- IPホルダーがワンストップで、NFTの発行や販売のサイト構築ができる独自プラットフォーム
Rakuten NFTではIPホルダーが発行するNFTを取引でき、決済には楽天IDを使用可能で、楽天ポイントを貯めたり使ったりすることも可能になる予定です。ブロックチェーンに関する専門的知見がなくても、IPホルダーは自身で技術開発をすることなくNFTを発行・流通できるようになるとしています。加えて、楽天が運営する他のサービスで商品を購入したり使用条件を満たしたりするとNFTを景品として獲得できるなど、さまざまなサービスと連動したプラットフォームとしても活用できるようになる予定です。
楽天は2016年8月、ブロックチェーン技術に特化した研究開発組織「楽天ブロックチェーン・ラボ」を開設し、2019年8月からは楽天ウォレット株式会社で暗号資産における現物取引サービスを提供してきました。こうした取り組みで培った技術を最大限に利用してNFT事業に参入することで、比較的狭いコミュニティで流通しているNFTの市場環境を変化させ、幅広いユーザーがNFTを保有することに価値を感じられるように「NFT市場の民主化」を目指す意向です。
音楽やアート、トレカのNFTを取り扱う予定のeBay
大手プラットフォームのeBayは2021年5月、自社のプラットフォームにおけるNFT取引を強化する方向であるとロイターに対して語りました。これにより、さらに多くの収集家やクリエイターによる利用が見込めるとしています。
これまでにeBayは、トレーディングカードや腕時計、スニーカーなどの物理的な収集品を扱うインフラに多額の投資をしてきました。今後は自社のプラットフォームにおけるデジタル収集品の販売を徐々に確立していき、まずはeBayの基準を満たした信頼の置ける出品者が利用できるようにしていく意向です。取り扱うNFTは、音楽やアート、トレーディングカード、エンターテインメントなどのカテゴリになるとしています。
まとめ
2021年に入ってから多くのNFTマーケットプレイスが誕生していますが、NFTのみを取り扱うマーケットプレイスも多いことから、初心者にとっては挑戦しにくいといった声もあるようです。Shopifyや楽天、eBayのような利用人口が多いプラットフォームでNFT取引ができるようになれば、使いやすさの面からOpenSeaなどの既存の大手NFTマーケットプレイスにとって脅威となるかもしれません。こうした大手ECプラットフォームの参入が、今後NFT市場全体にどのような影響をもたらすのかに注目です!
今後もこちらでは、NFT関連の役立つ情報をお届けしていきます。NFTや暗号資産など、ブロックチェーン技術にご興味のある方は当社に是非ご連絡ください。