パーツをランダムに組合せてNFTアートを生み出す!?Bored Apeの作り方とは

パーツをランダムに組合せてNFTアートを生み出す!?Bored Apeの作り方とは

NFTマーケットプレイスや一般オークションで取引されているBored Ape (退屈した類人猿) というイラストをご存じでしょうか?これはジェネレーティブNFTと呼ばれる方法で作られたイラストです。今回はBored Apeの作り方や仕組みについて説明します。

Bored Apeとは?

あらかじめ準備しておいた顔パーツを、お正月の遊び「福笑い」のようにツールで自動的に組み合わせて新しいバリエーションのイラストを合成します。Bored Apeは近未来の2031年、投資によって大金持ちになった猿達が暇を持て余しておかしな行動をし始める、という設定のイラスト群です。

なお「Apeing」は「よく理解していないことに多額の投資をする」意味のスラングで、Bored Apeは、コレクター自身の将来像を反映させた皮肉混じりのイラストになっています。

NFTマーケットプレースOpenSeaで販売されているBored Ape Yacht Club作品群https://opensea.io/collection/boredapeyachtclub

Bored Apeのイラスト販売元は米国Yuga Labs社で、2021年4月30日から販売開始されました。まだ登場から半年程度しか経過していないことになります。最初の売り出し価格は、手数料を除き0.2ETH(当時のレート1ETH=297,769円)つまり約6万円でした。これでもイラストとしては十分に高額で、誰でもが買おうと思うような値付けではありません。しかし、さらにその後価格が急騰し、2021年11月24日現在の相場は安い作品で42.3ETH(レート1ETH=486,019円)つまり約2056万円と驚くような値札が付いて市場に出されています。

NFTマーケットプレースOpenSeaにおける「Bored Ape」作品の最低価格推移(出典:Dune Analytics)

「あのときApeのように何も考えず投資しておけば俺も金持ちになれたのに!」と思っても後の祭り。実際にOpenSea市場を見ると、中には仕入れ値0.267ETHの作品を半年間寝かせたまま、64ETH (約3110万円)で売り抜けようとする人が実際に存在しています。

Bored Apeはどのように作られているのか?

NFTマーケットで販売されているBored Apeの作品群をよく見ると、どれもこれも互いに良く似ているけど、全く同じものは存在しません。このような仕組みはどのように実現されているのでしょうか?

Bored Ape画像は、まるで「福笑い」のように、複数の顔パーツを重ね合わせて出来上がっています。仕組みを説明しますが、著作権に触れないようBored Apeそのもののイラストではなくロイヤリティフリーのイラスト素材を加工して説明します。

お絵描きソフトの、Adobe社 Photoshop・フリーのGimp ( https://www.gimp.org/ ) などは、Windows付属などの簡易お絵描きツールとは異なり、画像(PNGやGIFなど)の透過性を正しく扱うことができます。

例えば、次の2つの画像のうち、左側は白色の背景色がある画像、右側は背景色が透過性を持つ画像です。透過性を正しく扱える場合、他の画像の上に重ると透過な部分を通してその下の図柄が見えるようになります(図中の市松模様は透過性を持つ部分を表しています)。

Bored Ape のようなイラストを合成するには、右側のような背景が透過性を持つ画像が材料として必要になります。

左は背景が白色の画像・右は背景が透過の画像

加えて Adobe Photoshop・Gimp等は簡易お絵描きツールと異なり、レイヤーという概念を持っています。これによりレイヤー同士を重ね合わせたり、レイヤーを個別に表示/非表示させたり、上下の重なり関係を逆に組み替えたりすることができます。

上側レイヤーに透過を持つ画像を置くと、透明の部分から下側レイヤーの画像が透けて見えます。

透過画像のレイヤー重ね合わせ
重ね合わせた合成画像

これと同じ要領で、輪郭・眉・目・鼻・口、と言ったパーツの画像を重ね合わせるとBored Apeのような色々なバリエーションのイラストを合成することができます。

合成中のイラスト
合成により様々なバリエーションができたイラスト群

Bored Apeのイラスト合成時の工夫

レイヤー重ね合わせによって、Bored Apeのようなバリエーションを持つイラストを生成できることは分かりました。しかし実際にBored Apeの販売のようなビジネスを軌道に乗せるには、いくつもの工夫が必要になります。

組み合わせ発生数の調整

お絵描きツールのペンタブレット等を用いたデジタルイラスト制作過程では、10~20個といった大量のレイヤーが使用されるのが珍しくありません。しかしジェネレーティブNFT の場合、ツール合成を破綻なく成功させるため、合成前に大量のレイヤーを数個にまで集約させる必要があります。Bored Apeのバリエーションを見てみると、合成対象レイヤーは、

  1. 帽子(+髪型)
  2. 顔面ベース(+首・耳・背景色)
  3. 両目(+アイウェア)
  4. 口(+タバコ)
  5. 上半身の服

の5個程度に集約されているようです。色々なバリエーションの存在するところがBored Apeの面白さである一方、無限に組み合わせが存在すると購入者に思われたらNFTアイテムとしての希少性が失われ、高い値付けが期待できません。総売り上げ最大化のため、予めどの程度のバリエーション数を生産するのか戦略が必要になります。Bored Apeとは別のプロジェクトになりますが、同様のジェネレーティブNFTを販売するポップアート作家Franky Aguilar (フランキー・アギラール)によると、自身の場合バリエーション数を10,000個で計画していると述べています。

https://www.prnewswire.com/news-releases/latin-american-nft-cryptoartist-frankynines-debuts-new-sup-duck-nft-art-collection-sells-out-in-48-hours-301336993.html

同一画像生成を回避する管理

組み合わせバリエーションが限られるため、10,000回もランダム組み合わせを行うと、既に出現済の同一組み合わせを避けられません。同一の組み合わせ販売が後で見つかったら所有者にとって価値棄損につながり、さらに所有者はアバター(自身を表すアイコン)として使用できなくなってしまいます。何よりも悪評発生は作品群全体の相場総崩れの引き金になり兼ねないので絶対に対策が必要です。そのため過去に生成した組み合わせをデータとして残しておき、重複組み合わせ出現を回避する工夫が必要になるでしょう。

レア化

初期に販売されたBored Apeは装飾が少なく、サルの原型を保っている素朴な絵柄ですが、最近作はサルからかなり離れたパンク調アートへと変化しています。コレクター心理として数少ない初期作品をプレミア扱いする傾向はどの世界でも同じで、完成度の上がった最近作よりも初期のシンプルな作品の方がより高額評価になるようです。デザイン変化が販売元の意図通りかまでは分かりませんが、結果的には2次流通での高騰が世間の注目を集め1次流通の需要につながるというアートビジネスらしいサイクルが出来上がっています。

流通量のコントロール

市場に2次流通作品がだぶついて相場崩れを起こすことへの対抗策と思われますが、販売元は現所有者に対し、作品に応じた3Dモデルの提供・イラストの絵柄を変形させるミュータント化ツール提供・クラブ員(作品保有者)限定チャット開設、といったサービスを提供し、作品を長期保有するようコレクターに促しています。2次流通量を見ながら施策を追加するといった調整が必要になります。

インフルエンサーの積極導入

アート分野に影響力を持つ音楽家・美術家・VIPに所有者になって貰い、その好意的なコメントによって市場での作品需要を喚起する戦略を取っています。

まとめ

Bored Apeイラストの制作・販売は一見、素朴なビジネスにも見えますが、実際は「生き馬の目を抜く」とまで形容されるポップアートビジネスのノウハウが注入されているようです。ポップアートは買い手が付かなければ昨日の10億円評価が今日には10円になるかも知れない鉄火場です。Bored Apeがカネになったという実績が得られた以上、ポップアートの画商達が今後NFTアート市場に積極的に乗り出してくるかもしれません。

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