ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、世界的に経済が混乱するなか、NFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)や暗号資産の利用に注目が集まっています。この記事では、法定通貨と暗号資産の違いや、NFTや暗号資産を保有するメリット・デメリットなどを解説します。
法定通貨と暗号資産(仮想通貨)の違い
法定通貨とは、米ドルや日本円のように、その国の政府に認められた通貨のこと。その国において、額面で表示された価格での最終決済手段として認められます。
一方で暗号資産とは、インターネット上でやり取りできる財産的価値のこと。次のような特徴があります。
- 不特定の者に対して代金の支払いなどのために使用でき、法定通貨と相互に交換できる
- 電子的方法で記録され、銀行などの第三者を介することなく、やりとりできる
- 法定通貨、または法定通貨建ての資産(電子マネーなど)ではない
お金の価値はどのように決まるのか
法定通貨の価値は、経済状況によって決まることが多く、経済が安定している国の法定通貨の価値は高い傾向にあります。米ドルや日本円が例として挙げられるでしょう。一方で、経済が不安定である国の法定通貨の価値は、低くなる傾向にあります。ベネズエラのボリバルなどが例として挙げられます。
暗号資産の価値は、市場での流通量や、需給バランスなどの要素によって決まります。たとえば有名な暗号資産として知られるビットコイン(BTC)には、2,100万枚の発行上限が定められています。この供給量よりも需要が多くなれば、希少性が上がり、長期的に価値が上がっていく仕組みです。
NFTや暗号資産を保有するメリット、デメリット
NFTや暗号資産を保有するメリットやデメリットは、どのような点にあるのでしょうか。
メリット
暗号資産のメリットとして、法定通貨のように銀行などの第三者の管理を受けておらず、経済状況の影響を受けにくい点が挙げられます。
時間や場所に縛られない取引もメリットです。暗号資産は基本的に24時間365日取引が可能で、生活スタイルに合わせた取引ができるでしょう。
株式やFXと比べて少額から取引できる点も、暗号資産の魅力です。暗号資産の種類によって、最小注文数量は異なりますが、なかには日本円換算で100円以下から取引できる暗号資産もあります。したがって、最初から大きな金額で取引するのは不安な方でも、少額から取引を開始できるでしょう。
NFTアートに着目すると、将来的に価値が大きく上がる可能性がある点がメリットといえます。たとえば、デジタルアーティストBeeple氏の「Crossroads」という作品は、2020年10月に約600万円で初めて落札されていました。この作品は、全アメリカ大統領のトランプ氏を風刺した短い動画のNFTアート。2次流通で再販売されていましたが、大統領選挙の結果を受けて、2021年2月になんと約7億円で落札されました。半年もたたないうちに100倍以上の価格になったのです。
デメリット
暗号資産のデメリットとして、国による価値の保証がない点が挙げられます。経済状況の影響は受けにくいですが、システムの崩壊などによって万が一暗号資産の価値が暴落する事態が生じても、国は価値を保証してくれません。
NFTに着目すると、今後価値が大きく下がる可能性もあります。NFTアートを「アート投資」として投資目的で利用する人もいて、株式やFXのように価格変動が起こり得るからです。特にNFTアート市場はまだ新興市場であり、価格変動が激しくなりがちで、価値が大きく下がれば損失も大きくなるでしょう。
外貨保有との違い
株式やFXのほかに、金融商品として一般的に広く知られているのが、外貨です。NFTや暗号資産は、外貨保有とどのような違いがあるのでしょうか。
大きな違いが価格変動率(ボラティリティー)です。暗号資産は1年の間に価格が2倍になったり、反対に2分の1に下落したりする可能性があり、ボラティリティーが大きくなっています。一方で外貨は、変動があるにしても数%の範囲で変化することが多くなっています。
もし自国の経済が崩壊したらどうなる?
ここでは、もし自国の経済が崩壊したら通貨の価値はどうなるのかを見ていきましょう。
通貨の価値がゼロに近づく
自国の経済が不安定になると、必要な物資や人件費が払えなくなり、赤字国債を発行して支払いをするようになります。その結果、市場に紙幣が大量に出回るため、通貨の価値がゼロに近づきます。
通貨の価値が暴落すると、その国で使われている通貨ではなく、米ドルなどで商品が値付けされることもあります。その国の通貨での預金の価値も目減りするでしょう。
現金や預貯金などのほかにも、法定通貨建ての次のような金融資産の価値がなくなります。
- 株式
- 債券
- 投資信託
- 生命保険
- 商品券や小切手
暗号資産による資金調達も行われている
ロシアによるウクライナ侵攻に伴い、暗号資産による資金調達も行われています。ウクライナ政府はロシアの侵攻に対抗するために、寄付された暗号資産を使い、食料や軍事物資、ガソリンなどを購入しています。3月頭の時点で、約1,000万ドル(約12億円)相当の暗号資産が使われたといいます。
また、ウクライナを支援する手段として、NFTにも注目が集まっています。ウクライナのフョードロフ副首相がNFT発行計画を発表するほか、NFTマーケットプレイスではウクライナのクリエイターを支援する動きが出てきています。
実際にキエフ生まれの写真家Vitaliy Raskalov氏は、ロシアによる侵攻が始まる半年ほど前から、自身の写真コレクションをNFTとして、世界最大規模のNFTマーケットプレイスOpenSeaで販売してきました。同氏はこれまでに約4イーサリアム(約130万円)を調達。得られた資金は、防弾チョッキやヘルメットなどの購入に充てられるとのことです。
暗号資産は安定した投資になる?
ウクライナが例に挙げられるように、経済状況が悪化したときでも利用されている暗号資産ですが、安定した通貨になるのでしょうか?
人気銘柄以外は注意が必要
暗号資産は、人気銘柄以外は注意が必要です。なぜなら、特定の暗号資産の上場が廃止されることも珍しくないからです。
実際に世界的最大手仮想通貨取引所であるバイナンスは3月1日、5銘柄の上場廃止を発表しました。対象となる銘柄は、Bitcoin Diamond(BCD)、Monetha(MTH)、Cindicator(CND)、YOYOW(YOYO)、Nitro Network(NCASH)の5つのアルトコイン(ビットコイン以外の仮想通貨)です。
上場廃止の詳細な理由は明らかになっていませんが、バイナンスはユーザー保護を目的に、各銘柄のプロジェクトが期待される基準を満たしているかを定期的に評価しているようです。評価基準は複数あり、プロジェクトの開発状況や、バイナンスとのコミュニケーション頻度、流動性などの基準が含まれるといいます。
バイナンスは2021年12月にも、3銘柄の上場廃止を発表しました。
規模や用途をチェック
暗号資産を実際に保有する際には、取引量や発行数といった規模や、用途をチェックすることが重要です。暗号資産の用途として、次のような例が挙げられます。
- 投資用途:暗号資産には財産的な価値があるため、外貨預金やFXと同様に投資目的として利用する
- 決済用途:商品を購入する際の決済手段として利用する
- 投げ銭用途:コンテンツクリエイターに対し、アイテムや金銭をプレゼントする「投げ銭」の機能を果たす
価値のある暗号資産を見極める
価値のある暗号資産を見極めるには、規模や用途のほかに、次のような点を意識する必要もあるでしょう。
- 時価総額は高いか
- プロジェクトが動いているかどうか
- 企業が提携、または出資しているか
時価総額については、暗号資産市場での需給バランスなどが反映されるものなので、高いほど安定している傾向にあります。将来性のない暗号資産は、プロジェクトの内容が曖昧だったり、進行していなかったりするので、その点も注視する必要があるでしょう。加えて、企業が提携または出資していれば、一般的には信頼性が高い暗号資産といえます。
まとめ
暗号資産は経済状況の影響を受けにくく、デフォルト(政務不履行)などの場合にも有用性を発揮する可能性があります。ただ、暗号資産は銘柄によって上場が廃止されるといったリスクもあるので、用途や規模、プロジェクトの進行具合、企業による出資状況などを確認し、価値のある暗号資産を見極めることが不可欠といえるでしょう。
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