メタバースで求められるのは臨場感!アバター用カスタムアイテムも多数登場

メタバースで求められるのは臨場感!アバター用カスタムアイテムも多数登場

最近よく耳にすることが多いメタバースは、次世代コミュニケーションツールとして期待されており、期待の反映として、IT分野各社が開発投資を加速させている状況です。
今回はメタバースの魅力やOpenSeaで販売されているアバターのアパレル商品について、ご紹介いたします。

Meta Oculus社サービス提供の仮想オフィス「Horizon Workrooms」

メタバース向け投資の事例

メタバース投資を計画する会社には、巨大テック企業が多いですが、そのバックボーンは様々であり、3D等のVRゴーグルデバイス・SNS・テレビ会議システム提供・オフィスソフトツールなど、中核事業が必ずしも同一ではありません。

  1. メタ社(旧称フェイスブック社)
    インスタグラム上にてメタバース向けアバター(デジタル空間での自分の化身)が着る服等をNFTアイテムとして扱う。メタ社のメタバース全体の総投資は1兆円規模
    参考URL:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN160G90W2A310C2000000/
  2. google &Foxxcom
    Teamsテレビ会議上にアバター姿で参加できるようにする「Mesh for Teams」機能追加(ハード・ソフト)
    参考URL:https://www.moguravr.com/ennoconn-investment/
  3. Microsoft
    Office365機能拡張、メタバース上で従業員同士が共同作業でワード文章作成等を可能にする「Microsoft Loop」開発
    参考URL:https://pc.watch.impress.co.jp/docs/news/1363523.html
  4. NVIDIA
    産業用3DCAD「Omniverse」による生産ライン等のデジタルツイン(リアル環境を仮想環境で再現・シミュレートする)設計環境提供
    参考URL:https://www.nvidia.com/ja-jp/omniverse/enterprise/
  5. グリー
    既存のグリーのバーチャルライブ配信環境「REALITY」を、仕事や経済圏構築などメタバース向けに拡張し、アバターで活動する仮想社会を作る
    参考URL:https://corp.gree.net/jp/ja/news/press/2021/0806-01.html
  6. ドコモ
    ドコモ、HIKKY社へ65億投資 ※3/31からコミュニケーションツール「XR World」サービス開始
    参考URL:https://www.docomo.ne.jp/info/news_release/2021/11/15_00.html
  7. ソニー
    ゲーム「Fortnite」開発元のEpic Gamesにソニーが10億ドル(約1254億円)を出資、子供向けメタバースをEpic・Legoグループと共同開発
    参考URL:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/2204/12/news069.html

メタバースはVRゴーグルありきの3D立体視が必須と思われている節がありますが、例えばドコモのサービス「XR World」はVRゴーグルなしでサービスインしており、多くのユーザーはごく普通のアプリと同様、スマホやパソコンモニターを使ってサービスを受け始めることができます。VRゴーグル等の立体視デバイス開発は多数メーカー参入で盛んに行われていますが、機能・重量・価格・長時間使用時の疲労、など発展途上商品で家庭・職場に普及可能なモデルの登場にはまだ時間が掛かりそうです。そのため当面の間、3次元モデルを平面投影した結果を通常の2次元モニターで見る、というメタバースの運用が続くと思われます。

メタバース投資に特に前のめりになっているのはメタ社(旧称フェイスブック社)のグループで、既に浸透済の社名「フェイスブック」を捨ててまでメタバース市場に社運を賭けています。CEOのザッカーバーグは投資計画について、今後10年利益を生まないとしても毎年100億ドルを投資し続けると発言しています。VRゴーグルのブランドとして有名だった旧オキュラス社もいつの間にかメタ社が買収し、グループ全体で市場ニーズを網羅する体制を整えています。

メタ社はNFTアイテムを今後数か月以内に同社の主力サービスであるインスタグラム上で販売可能にするというアナウンスを行っており、アバターが着るアパレル等を取り扱う予定とのこと。ただしアバター用アパレルは既に大手アパレル専業メーカーがNFTとは関係ない自社ECサイトで販売をサービスインさせており、メタ社目論見通りにビジネスが進むかは不透明です。

メタバースの魅力とは?

一緒に働いているという体感

テレビ会議システムのよくある利用シーン

テレビ会議システムの普及により遠隔地からでも会議へ参加できるようになりましたが、現状のテレビ会議システムはまだ電話代用の域を出ておらず、従業員同士が意見交換しながらオフィスで共同作業するという体感を得るレベルには至っていません。

テレビ会議システムは遠隔地との会議を実現させましたが、メタバース空間のアバター同士が面と向かいあう状況は「生々しさ」という面で他者との心理的距離が異なります。社会情勢変化により、物理的に確保したオフィスに一同が集合して働くスタイルは今後どんどん実施困難になって行くでしょう。その代わりとして「一緒に働いている」という体験を仮想空間上で実現しようというのがメタバースにおけるコミュニケーションです。

アバターは必ずしも本人そっくりとは限らない

仮想空間なので、各自の外見そっくりの姿を再現して集合すると思いがちですが、必ずしももそうではありません。通信データ量・コンピュータの演算能力を考慮すると、本人の外見そっくりの見た目再現や反応実現のために必要以上のCPUパワーを振り向けるのは無駄です。そのメタバース空間が何人分のアバターを収容可能なのかも表示品位とのトレードオフになります。つまりメタバース体験上、リアリティ追求がプラスに働くのは確かですがCPUパワー消費の面でデメリットも大きい、ということです。大切なのは一緒に働いているという実感・没入感を得ることなので、姿かたちのリアリティ追求は手段でしかなく、現実問題としてある程度妥協する必要があります。Meta社事例のように粘土アニメ程度の品位に留めることが現実的ですが、ただどの方向からアバターを見ても違和感を抱かせないため3次元モデルを用いる必要があります。

Meta Oculus社「Horizon Workrooms」によるアバター同士の共同作業例
(https://www.youtube.com/watch?v=LmA-wLqChCk より)

アバターはもはや人間の姿でなくても良い

姿かたちがリアルじゃないのに同僚と一緒に働いているような没入感が得られるものなのか?と疑問に感じるかも知れませんが、自分の同僚が必ずしもリアルな人間の姿をしている必要はありません。

例えば、ソフトウェア開発の世界には従来から「ラバーダック・デバッグ」という素朴な手法があります。コードレビュー(プログラムの働きを他者に説明することで設計上の課題を検証する)の相手を務めてくれる人を見つけられない場合でも、人間の代わりにビニール製のアヒル人形を相手にプレゼンするというものです。これは、他者が納得するようプログラムの狙いなどを説明すると、自分の犯した間違いに自分で気付き易いという現象を利用したデバッグです。

ラバーダック・デバッグの様子
( https://ja.wikipedia.org/wiki/ラバーダック・デバッグ より)

つまり大事なのは臨場感であり、一緒に働く体験を得る上で表示リアリティを追求する必要はなく、相手が人間に近い反応をする必要もない(たまにクワッと鳴く程度の反応は欲しいですが)ということです。大事なのは、私・あなたという魂の入った物体同士が同一空間を共にする感覚を得ることです。

3次元モデルのデータ互換性について

各社メタバースのサービスが採用するネイティブなデータフォーマットは情報不足のため不明点が多く、メタバース間でどの程度互換性があるのかはっきりしません。ただし3次元データフォーマット標準化の動きは進んでいます。現在アバターのデータフォーマットとして仕様が公開され、複数社の採用が進んでいるのは、一般社団法人VRMコンソーシアム ( https://vrm-consortium.org/ )」です。このドワンゴ社主導で作成されたVRMフォーマットは、オープン仕様で標準サンプル実装がオープンソースで公開され国内外での規格標準化・普及を目指しています。

3DアバターファイルフォーマットVRMの普及を目指すVRMコンソーシアム

VRMは独自仕様ではなく、3次元空間を記述するgITF2.0に準拠しています。gITF2.0は「3DにおけるJPEG」と呼ばれ、Google・Mozilla・Apple・Facebook・Unityが採用している3次元モデルの事実上の業界標準です。VRMはgITF2.0の拡張として可動関節位置・腕の回転座標系など人体モデルを定義しています。各社が開発するメタバース空間は、gITF2.0フォーマットとのデータ互換性を確保するはずなので、VRM仕様で定義したアバターは、どのメタバース空間でも利用可能になる(インポート可能になる)と予想されます。

2次元画像をアバターとしてメタバース空間で使用可能か?という問題については、メタバース空間が3次元モデルで定義されているので、例え2次元のアバターを流用するとしても「3次元空間内での平べったいアバター」としてデータを定義し直す必要があり、即座に利用可能ではありません。また2次元→3次元へのデータ変換の手間や見栄えを考慮すると、現時点から2次元データを流用するケースは少なく、メタバース用途に新たな3次元モデルを準備しアバターとして利用するケースが殆どになるでしょう。

自身のアバターにオリジナリティを出すには

アバターを自己の分身として扱う・扱われると、他者と見た目が同じ没個性のままでは満足できなくなり、どこかに自分らしさの要素・表現を盛り込みたくなります。また、アバターの群衆の中で自分を他者に見つけてもらうためにも見た目のユニークさは必要です。現状のアバターは、

  1. メタバース側が提供する簡易な無償の汎用型
  2. ユーチューバー等がビジネスとして準備するフルオーダーメードのもの
  3. その中間の、既製服の感覚で販売されるデザインされたもの

のどれかです。「③」について言えば、2021年末にナイキ傘下へ入ったバーチャルアパレル(仮想空間のファッションアイテムメーカー)のRTFKTは、ポップアート作家として有名な村上隆とのコラボでコスチュームを纏ったアバターをNFTアイテムとしてOpenSeaで販売しています( https://opensea.io/collection/clonex )。個人使用時の制限付きですが、オーナーによるカスタマイズも許諾されているので、例えばオーナーはアバターに自分好みの帽子を付け加えてメタバース空間に登場させることも可能です。

アバターのOpenSeaコレクション「CLONE X」(抜粋)

ただ著名作家コラボ商品なのでNFTマーケットプレースでは投機対象になっており、取引相場が15ETH(約600万円)程度と高騰、実用アイテムとは言い難いです。

アバター用アクセサリやアパレル商品が多数登場

高いコストを掛けずに見た目のユニークさを演出するには、アバターにアクセサリを身に着けさせるのが適当です。これは没個性のビジネスバッグにワンポイントアクセサリを付けて人のバッグと紛れないようにしようとするのと同じ発想です。このようなオリジナリティを出す手段として、アバターが身にまとう、帽子・ハンドバッグ・スニーカー・衣服などのアパレル(ゲームの世界ではスキンと呼ぶ)需要が見込まれます。自社ECサイトが販売ビジネスの中心ですが、NFTでも既にいくつかのコレクションが立ち上がっており、例えば既にβ版のメタバース空間をサービスインさせているDecentraland ( https://decentraland.org/ )は、一次販売を自社ECサイト内で開始していますが、購入者によるアイテムの二次販売はOpenSeaで行われています ( https://opensea.io/collection/decentraland-wearables )。

OpenSeaでのアイテム相場も0.03~0.3ETH(約1.2~12万円)と、アバター本体と比較すると現実的な価格で取引されています※アバターに着用させるためには、データ互換性確保のため「.vrm」形式のファイルが必要なので、配付物に含まれていることを確認ください。

アバター向けアパレルのOpenSeaコレクション「Decentraland Wearables」(抜粋)

バーチャル世界のファッションショーも開催

リアル世界では無用のアバター向けアパレルですが、メタバース空間ではアバターにとって着用可能なアイテムになります。NFTマーケットプレースで初めて観賞用ではなく実用的なアイテムが出現していると言えます。リアル世界で使えるものがバーチャル世界では役に立たず、バーチャル世界で使えるものがリアル世界で使えないのは面白い現象です。需要への期待を反映するように、バーチャル世界のファッションショーまで開催されています。IMVU Fashion Show 2021は、Vogue誌ネット版でも紹介されました( https://www.vogue.com/article/imvu-virtual-fashion-show-announcement )。ここで登場する服・バッグなどのアイテムはOpenSeaでも購入することができます 

( https://opensea.io/collection/imvu-fashion-show-2021 )。

アバター向けアパレルのOpenSeaコレクション「IMVU Fashion Show 2021」(抜粋)

メタバースの今後の需要とは

アバター向けアパレル以外のメタバース需要として、ビジネス分野で言えばオフィス関連需要が見込まれそうです。オフィスをメタバース空間に移すと、現実世界のオフィス経費・交通経費を削減できるなど、会社経費へのコストメリットが得られます。ただし、メタバースは身元不詳の部外者アバターがうろついている不審者だらけの世界なので、ビジネスユースを考えるとメタバース空間の一角に部外者が入って来ないよう会員制空間を確保する必要があります。つまりメタバース上で「土地」の権利を取得した上で、そこにオフィスを作る必要があります。

またオフィスである以上、仮想とは言え見た目の快適性が求められるので、内装・パーティション・観葉植物などのオフィス用品オブジェクトの需要も期待できると思います。

今後もこちらでは、NFT関連の役立つ情報をお届けしていきます。NFTや暗号資産など、ブロックチェーン技術にご興味のある方は当社に是非ご連絡ください。

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