話題が尽きないNFTですが、今年に入って広く検索されるようにもなっています。しかし所有権が法的に認められず、バブルもはじけたのでは?と噂もされるのも事実。そこでNFTが一過性に終わらない理由を解説します。
NFTでデジタル所有権を手に入れる
NFT化されたデジタルアーティストBeeple(ビープル)の絵画が75億円で落札され、ツィッター創業者ジャック・ドーシー氏の初ツィートが約3億円で売れるなどと、話題が尽きないNFT(非代替性トークン)。アート、エンターテインメント、スポーツ、音楽、メディアなど、あらゆるビジネス分野に受け入れられながら、そのビジネス領域を広げています。
NFTとは?
では、話題のNFT(非代替性トークン)とは一体なんでしょうか?
NFTは、ビットコインなどの暗号通貨と同じ、ブロックチェーン技術を利用した暗号資産のことです。NFTとして発行されるのは、暗号通貨と違い、オリジナルのトークンです。たとえば暗号通貨ビットコインの場合は、千円札が別の通過でも千円と同じ価値を持つように、他の暗号通貨と交換可能です。しかしNFTはそうではなく、それぞれのトークンが唯一無二なので、AというトークンとBというトークンを置き換えることはできません。
そんな特性を踏まえてCoinbase Learnは、すべてのNFTについて「NFTは唯一無二なので、デジタル上の美術品や録音物、仮想不動産やペットなどのデジタル資産の所有権を認証するために使用できます」と説明しています。
つまりNFTは、どこでも誰でも共有できるシンプルなjpgやgifのデータであるデジタルコンテンツそのものを指すのではなく、その“所有権”を指す、デジタル署名のことだと言えます。
そんなNFTは日本でも注目を集め、とくに2021年3月ごろからGoogleキーワード検索数をグンと伸ばしています(以下図)。
とはいえピーク時に比べると検索数は落ち、「NFTバブルがはじけたのでは? 」と、まことしやかに噂されているというのも事実です。
それに対して、「認知が高まってキーワード検索をする人が減っただけで、引き続きNFTの新たなバブルがくるはず」など、さまざまな意見が飛び交っています。
参考記事:注目すべきNFTのトレンドと実情について。マネーゲームはいつまで続く?
NFTは一過性のブームに過ぎないのか、引き続き未来のビジネスチャンスを牽引する天使なのか。いったいどちらなのでしょう? NFTの未来は、知っておくべき内容です。
ここでは、NFTにおける”所有権”の法的解釈と、なぜNFTが人を魅了するのかという、大きく2つの側面でその未来を考察し、NFTがバブルに終わらない理由について解説していきます。
日本におけるNFTの法的解釈とは?
まずNFTを未来予測するための要素として挙げられるのが、NFTの“所有権”に関する法的解釈です。
ズバリ答えを言えば、日本における現行の民法・著作権法上では、NFTのデジタル所有権は認められていません。
その理由は、民法上、所有権の客体となる「物」(民法206条参照)とは、「有体物」を指すとされます(民法85条)。さらに、東京地裁平成27年8月5日判決は、ビットコインについて有体性を欠くため所有権の対象にはならないと判示しています。
つまり、NFTは、ビットコインなどの暗号資産と同じく、ブロックチェーン上のデジタルトークンとして発行されたデータとして存在するにすぎず、有体性を欠くために民法上の「物」には該当しない。よって、NFTの法的な所有権は認められていません。
参考記事:NFTの「所有権」って法的なの? 知っておくべき、NFTを活用したデジタル資産ブームの裏側とは
NFT所有者が実際に所有するもの
法的な所有権が認められないのであれば、では具体的に、NFT所有者は実際に何を所有することになるのでしょうか。そのポイントは、以下の4点にまとめられます。
1. NFTは、デジタルコンテンツを構成する0と1のビット配列に対する法的請求権ではない。法的な権利は存在しない。
2. NFTは完全にデジタルなので、デジタルアートなどのデジタルコンテンツの物理的な所有権ではない。
3. NFTは、ブロックチェーン上に存在するデジタルトークンであり、該当するアートを指し示すメタデータ(データに関するデータ)を含んで、それを自由に譲渡可能である。
4. NFTは、社会的に認知された所有権の記録である。アーティスト自身(またはNFTを鋳造した人)が、この作品の所有者としての特別な地位を、NFTの所有者に与える。
ここで注目したいのが、最後のポイントです。
この点を踏まえると、NFTの価値は発行者に直結しているという重要な意味を持っています。たとえば、自分がジャック・ドーシー氏のツィートをNFT化しても誰も気に留めないでしょう。ただし、そのNFTがドーシー氏本人から直接提供されたものなら? 大きな価値を持ちます。
言い換えれば、NFTは発行者の責任のようなもので、NFTの重要性や出所を尊重するかどうかは、発行者次第であり、NFTが与えるその他の特別な性質を尊重するかどうかも、発行者次第なのです。
NFTが発行され、売買されるまでの3ステップ
ここでは合わせて、NFTが発行され、売買されるまでの3ステップについても知っておきましょう。
ステップ1:NFTのタマゴ(源)の段階
存在するオリジナル資産ならなんでもNFTになり得ます。NFTの価値を高めるためには、発行者自身が産んだ(発行した)タマゴである必要があります(例:ジャック・ドーシー氏のNFT化されたツィートは、ジャック氏自身によって発行されたものである)。
ステップ2:NFTを発行する段階
次に、NFTタマゴをNFTとして、プラットフォーム上で「トークン化」するという出産(発行)プロセスを踏みます。プラットフォームには、クローズド(招待制)のものと、オープン(誰でも利用できる)なものがあります。
ステップ3:NFTを売買する段階
最後は、NFT売買用の二部市場プラットフォームを利用して、NFTをユーザーに販売したり、ユーザーから買い取ったりします。大抵の場合、二部市場では売買だけではく、ステップ2のトークン発行を行うこともできます。
ファンやコミュニティの心をつかむ、NFTという未来の可能性
なぜ人はNFTに惹かれるのか?
3ステップを踏んで発行されるNFTですが、それがたとえ発行者の責任におけるものにすぎず、所有権が法的に守られていないとしても、なぜ人はNFTに惹かれるのでしょうか。
ここにNFTがバブルやいっときのブームにはならないとする理由があります。
NFTが人を魅了するのは、応援し、一緒に成長したいというファン心理を活用できる新しいコンテンツ販売手法がとれるからです。例えば、刊行済み雑誌の電子出版権つきNFTを発行した、箕輪厚介編集長の『サウナランド』の事例にもそれが見られ、コミュニティやファンをしっかりと巻き込んでいます(※)。
より具体的に、あるバンドを例にだして説明しましょう。
バンドにとって、アルバムや特別なイベントでNFTを発行することは、初期やコアなファンに対して、特別なステータスとつながりを与えることができます。たとえばNFTがブロックチェーン上に存在することで、バンドはNFTの所有者にコンサートの割引やプレミア動画などの特別な権利を提供し、より直接的で経済的な関係を築くことができます。
NFTの影響力はデジタルを超え、リアル世界に及ぶ
このようにNFTを使って、ファンの所有権とコミュニティへの参加を早い段階で確保することで、NFT発行者が持つブランド力に応じ、経済をコントロールすることができます。つまり、デジタル上の権利を仮想空間に止めることなく、利用の仕方次第では、リアルな世界にまでそれを及ぼすような活用が出来るのです。
現在、ほとんどの暗号通貨は、デジタル形式です。しかしNFTの登場で、実世界の資産を、意味がある形でブロックチェーン上に関連づけられるようになっていくでしょう。今後、スポーツゲームのシーズンチケットがNFTとしてトークン化されることだってありえます。
NFTのニーズが高まれば、おそらく法規制も整備されていき、実際の所有権を確保する何らかの法的枠組みが含まれるようになっていく可能性もあるでしょう。
まとめ
多様性が重んじられるという社会の動きのなか、NFTを活用した、ファンやコミュニティ経済というモデルは、バブルや一過性のブームにとどまらないと予測されます。その鍵を握るのは、深くコミットするファンを持つようなプラットフォームになるかどうか。そんな場を育む大きな可能性を秘めたNFTは、”所有する権利”をキーワードにしてデジタルとリアルの世界を結び、今後もますますビジネス領域を広げていくでしょう。
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