ブロックチェーン技術を使ったNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)を活用し、これまでにデジタルアートやゲーム内アイテム、トレーディングカードなどのさまざまなデジタルデータが取引されてきました。そんななか注目されているのが、NFTプラットフォームへのエンタメ業界の参戦です。
この記事では、映画や音楽、アニメなどのエンタメ分野でのNFTに関する取り組みをご紹介します。
アンソニー・ホプキンスの主演映画『Zero Contact(原題)』
まず注目したいのが、映画におけるNFT活用です。2度のアカデミー主演男優賞を獲得しているイギリス出身の俳優で、作曲家、画家でもあるアンソニー・ホプキンスが主演を務める映画『Zero Contact(ゼロ・コンタクト)」が、長編映画として初めてNFTを活用して公開されることが発表されました。公開されるのは、長編映画やエンタメコンテンツをNFTとして配信するプラットフォーム「Vuele」です。
Zero Contactは、2020年における新型コロナウイルスのパンデミックの最中、17カ国で完全にリモート撮影で制作されたスリラー映画です。5人の人物が、地球滅亡の危機を食い止めるために闘うストーリーとなっています。
NFTが映画のチケットになる?
Zero Contactが注目されている理由は、アンソニー・ホプキンスが主演を務める点だけではなく、映画の鑑賞方法が新しいことです。Vueleでの予告編の公開に合わせ、同社は金融テクノロジーブロックチェーン企業であるカレンシーワークスが開発したNFTトークンの販売を開始しました。そして、NFTを購入することで映画を観られるようになると報じられており、NFTがいわば映画のチケットのような役割を果たしています。
NFTトークンにはいくつか種類があり、映画の映像に登場できる1名限定の「プラチナエディション」や、特典映像のついた「ゴールデンチケット」、制作風景の映像がついた「コレクターズエディション」などがあるとのことです。
Vueleの共同創設者であるリック・ダグデイル氏は、「当社のプラットフォームは、高価格のNFTを集めるコレクターだけでなく、一般的な映画ファンにも何かを提供できるよう設計されています。ゴールデンチケットは、NFTの世界を体験していただく機会と、デジタルウォレットの構築を始めてこの新しいプラットフォームで映画を観たり所有したりすることに慣れていただく機会を、ファンの皆様に提供します」と述べました。
次々とNFTを活用するクリエイターが登場
映画のみならず、NFTを活用するクリエイターが続々と登場しています。ここからは、音楽業界とアニメ業界におけるNFTの活用事例を見ていきましょう。
日本の音楽業界もNFTを活用
日本においては、ミュージシャン、音楽プロデューサーである小室哲哉氏のNFTが、2021年秋に販売されることが発表されました。今回販売されるのは、10月10日に開催された日本最大級のデジタル・クリエイティブフェス「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2021 supported by CHINTAI」にて小室氏が披露した音楽制作パフォーマンスのNFTです。このNFTは、エンタメ関連事業を展開するStudio ENTRE株式会社が運営するNFTマーケットプレイス「.mura(ドットミューラ)」で販売される予定となっています。
楽曲を紐付けたNFTではありませんが、これまでに販売された日本のシンガーのNFTとして、UVERworldのボーカルTAKUYA∞のNFTフォトアートや、研究開発要素の強い実験的なプロジェクトを中心に取り扱うライゾマティクスとPerfumeのコラボによるNFTアートなどが挙げられます。
海外でも有名シンガーがNFTを活用
海外においては、NFTを発行した世界初のバンドといわれるアメリカ出身のロックバンド「Kings of Leon(キングス・オブ・レオン)」のNFTが有名です。キングス・オブ・レオンは2021年3月、ニューヨークに拠点を置くブロックチェーンのスタートアップ企業YellowHeartと提携し、NFT形式のニューアルバム「NFT Yourself」をリリースしました。
3種類のNFTが用意されており、1つ目はスペシャルアルバムパッケージ、2つ目は最前列のチケットなどのライブ特典、3つ目はオーディオビジュアルアートのみの限定パッケージとなっています。
また、カナダ出身のシンガーソングライター、ファッションモデルであるショーン・メンデスの代理人は、アメリカのラッパーであるジェイ・Zと、アメリカに本拠を置くベンチャーキャピタルであるアンドリーセン・ホロウィッツとともに、音楽用の新しいNFTプラットフォームを構築する「Bitski(ビツキ)」に1,900万ドル(約21億7,000万円)を投資しました。
アニメ業界もNFTに参入
アニメ業界もNFTに参入しています。その事例の一つが、二次創作作品を提供するだけでNFT化・販売・収益還元まで行う、公式公認の個人クリエイター支援プログラムです。2021年5月に発表されたこのプログラムは、以下の4組織によって実現しました。なお、参加費は無料となっています。
個人クリエイター支援プログラム(出典:CryptoGames株式会社)
- 一般社団法人オタクコイン協会:ブロックチェーン技術の活用と、オタクコインの健全な発展および運営、ブランディング活動や関連プロジェクトの推進を行う
- SSS合同会社:「東北ずん子」をはじめとするキャラクターのデザイン、プロモーションを行う
- NOKID:漫画家、イラストレーター、アニメーターなどの所属クリエイターの制作力を強みとした映像制作を行う
- CryptoGames株式会社:ブロックチェーンゲームおよび関連サービスの開発・運営を行う
今回4組織は、NFTマーケットプレイス「Rarible」上の東北ずん子の認証アカウントにおいて、公式自ら二次創作作品を販売することで、個人クリエイターの二次創作活動を支援するとしています。東北ずん子は、SSS合同会社が運営するずんだ餅をモチーフにした少女のキャラクターおよびその関連コンテンツの総称です。
このプログラムの特徴は、NFTに関する専門的な知識がなくても利用でき、販売時のマーケティングや収益管理のための経理業務などを行う必要がないことです。これにより個人クリエイターから見ると、好きなキャラクターの二次創作作品を創作し、作品を公式に提供するだけで自身の二次創作作品を販売・収益化できるため、創作活動により専念できるとしています。
今回のNFT取引で販売する所有権は、あくまでも二次創作作品のNFTの所有権です。そのため、キャラクターの著作権や商標は引き続き、東北ずん子を運営するSSS合同会社が保持するとしています。
まとめ
エンタメ業界でNFTを売買するメリットとして、NFTを保有するファンとの直接的かつ永続的な繋がりが得られる点が挙げられます。NFTを通してファンとの関係性を構築することで、新しい映画や楽曲、コンサートチケット、グッズなどをNFTとして販売する際、効率良く収益化できるでしょう。NFTでしか得られない特典が設けられている場合も多く、ファンにとっては現実世界にはない体験ができるチャンスといえるかもしれません。
今後もこちらでは、NFT関連の役立つ情報をお届けしていきます。NFTや暗号資産など、ブロックチェーン技術にご興味のある方は当社に是非ご連絡ください。