2021年から急速に注目を集めたNFT(Non-Fungible Token)について、財産とみなすのか、もしくはただのデータと捉えるのか、世界的に明確な取り決めがされておらず、国ごとに見解が分かれている状況です。この記事では、世界各国でNFTがどのように扱われているのかを解説します。
NFTは財産になるのか
NFTは財産になるのでしょうか。ここでは、中国で実際に起こった訴訟を例に解説していきます。
NFTのデジタルコレクションは仮想財産の範疇に属する
中国では、あるテクノロジー・プラットフォームA社が実施していたNFTの「フラッシュセール」を巡って事件が起きました。このセールの際、あるユーザーが提供した名前と電話番号がID情報と一致しなかったことから購入が拒否され、ユーザーがA社を訴えたということです。
中国・杭州市の裁判所は、「NFTはクリエイターの独創的な芸術表現を凝縮したもので、関連する知的財産権の価値を有している」と述べています。また、「NFTはブロックチェーンノード間の信頼と合意メカニズムに基づき、ブロックチェーン上に形成されたユニークなデジタル資産である」とも述べました。
このような理由から裁判所は、「NFTのデジタルコレクションは仮想財産の範疇に属する」としています。訴訟案件の取引は「インターネットを通じたデジタル商品の販売」と考えられ、電子商取引事業として扱われるため、電子商務法によって規制されるとしています。
中国ではこう捉えられている
中国・杭州市の裁判所は、NFTコレクションが中国の法律で保護されるべき仮想財産であると考えています。具体的には、NFTは価値、希少性、取引可能性、制御可能性などの財産権の特性を持っていて、ネットワーク仮想財産に属し、中国の法律で保護されるべきだとしています。
日本ではどのような税金がかかるのか
日本では、クリエイターがNFTを販売して利益を得た場合、基本的に税金が発生します。NFTの販売で得た利益は、通常は「総合課税」として税金が計算されます。総合課税とは、NFTの販売で得た所得だけでなく、その他の対象となるすべての所得を加算し、その合計金額に対して所得税を課税する仕組みです。
総合課税の税率は、以下の表のように、所得金額に応じて5%〜45%の7段階に区分されます。
たとえば、課税される所得金額が700万円の場合、所得税率は以下のように求められます。
700万円×0.23-63万6000円=97万4000円
また、NFTの販売により利益を得ると、所得税のほかに住民税もかかります。住民税には、所得に応じた負担を求める「所得割」と、所得にかかわらず定額の負担を求める「均等割」があります。
NFTクリエイターが収益を得ると、一般的には「所得割」部分で税金が課されます。所得割の税率は、所得に対して一律10%とされており、前年の1月1日から12月31日までの所得で算定されます。そのため、所得税と住民税を合わせた15〜55%がNFTの販売にかかる税率となります。
クリエイターは儲けすぎに注意?
クリエイターは儲けすぎに注意が必要です。というのも、クリエイターに税金が発生するタイミングは、NFTを販売したときだけではないからです。
具体的には、保有する暗号資産を売却したときにも税金は発生します。NFTを販売すると、その代金が暗号資産で支払われるケースは多いですが、受け取った暗号資産を売却して現金化するクリエイターもいるでしょう。このように、暗号資産を現金化した場合は、暗号資産を譲ったとする「譲渡益」を得たことになり、所得として認識されます。
NFTは世界中で受け入れられてる仕組みなのか
ここまで中国と日本の事例を見てきましたが、NFTは世界的に受け入れられている仕組みなのでしょうか。ここでは、その実態についてご紹介します。
米ローン企業CashNetUSAは6月、国ごとのNFTへの反応に関するデータをまとめた調査結果を発表しました。同社の調査は、NFTへの関心が強い国や、NFTへの信用度が低い国のほか、NFTへの欲求の高い国のデータをとりまとめたものです。
肯定的な国
同調査によると、NFTに最も肯定的なのはバルカン半島の国モンテネグロで、1000件のツイートのうち862件が肯定的という調査結果が出ました。
また、NFTへの関心が最も高い国はシンガポールと香港でした。シンガポールに関しては、人口100万人あたり月間1万8,717回のNFTに関連する検索が行われています。シンガポールと香港の次にNFTへの関心が高いのは、ヨーロッパ地域や北米、カナダといった国だったとのことです。
否定的な国
NFTに最も否定的な国はポーランドでした。NFTに関連したツイート1000件のうち、227件が否定的なニュアンスを含んでいたとしています。ニカラグアも同レベルで、NFTに否定的な国であると発表されています。
まとめ
NFTを財産と考えるかどうかは、国ごとに見解が分かれている状況ですが、今後世界的にNFTが取引されるようになるにつれて、その考え方や法整備も変わってくるかもしれません。日本ではすでに、NFTの販売で得た利益にかかる税金について法整備が進んできているため、自身が作成したNFTなどを販売するクリエイターは仕組みをしっかりと理解する必要があります。
今後もこちらでは、NFT関連の役立つ情報をお届けしていきます。NFTや暗号資産など、ブロックチェーン技術にご興味のある方は当社に是非ご連絡ください。