高騰し続けているEthereumのガス代(NFT取引手数料)を抑える3つの方法

高騰し続けているEthereumのガス代(NFT取引手数料)を抑える3つの方法

ビットコインの仮想通貨プラットフォームは決済・送金に特化しているのに対し、ethereumは「スマートコントラクト」と呼ばれる汎用性の高いプログラムで実現しています。そのためプログラムを差し替えるだけで新しいサービスを追加することができ、決済・送金機能だけではなく、NFTのような別の機能をethereum上で動かすことができます。

スマートコントラクトを動かす・トランザクション送信する・マイナーに成功報酬を支払うといった作業には高額な経費(ガス代)がかかります。このガス代を抑えるためには、どうような回避策があるのでしょうか。

NFTを作る際に必要なガス代とは?

ガス代は自動車のガソリン消費に似せたモデルが採用されており、ethereumプラットフォームというエンジンを回すエネルギー源としてガスが消費され、もしスマートコントラクト実行中ガスリミットに達したら燃料切れを起こして実行が止まる仕組みとなっています。

これにより、例えばスマートコントラクトにバグがあり無限ループに陥ったとしても、いずれ燃料切れで処理が強制停止し、ethereum計算資源を保護することができます。このガスは有料で、消費量に応じてガス代という経費が掛かります。

NFTマーケットプレイスの運営の仕方にもよりますが、マーケットプレイスからユーザーに対し段階に応じて下記のようにガス代の請求があります。

  • ワンタイム経費 … NFTユーザーアカウントをethereumに登録する時のガス代
  • 都度発生の経費 … NFT売買記録をethereumに更新登録する時のガス代

マイナーへ支払うガス代が高騰

現在、NFTマーケットプレースを通じてマイナーへ支払うガス代が高騰しています。

ガス代高騰の原因は、DeFi(Decentralized Finance:分散型金融)やNFTが人気のため、これら複雑なアルゴリズムを動かすのに必要なethereumの処理性能が不足しているからです。有限な処理能力を多数のトランザクションで奪い合う状態のため需給バランスが崩れ、ガス代高騰が続いています。

NFTトランザクションを発行するユーザーは、取引時にガスリミット・ガス価格の2つのパラメータを設定します。

ユーザーに課金されるガス代は次の式で計算されます。
ガス代(ETH) = 実際のガス消費量(Gas)×ガス価格(Gwei)×10-9 (ETH/Gwei)

ethereumブロックチェーンへの仕事の依頼時、ユーザーは一旦、経費上限枠「ガスリミット×ガス価格×10-9」のETHをデポジットとして預けます。ブロックチェーンへの登録後、ユーザーにはこの枠のうち実際に消費したガス代だけが請求されます(ブロック登録されなければガス代はタダ)。消費されなかったデポジットの残りはユーザーへ返金されます。

マイナーには実際に掛かったガス代がブロックチェーンへの登録後、成功報酬として支払われます(ブロック登録されなければ報酬なし)。

https://etherscan.io/chart/gasprice によると、2021年9月現在、ethereum上でのガス価格は平均単価106Gweiで、この2年間で乱高下しながらも高騰していることがグラフから読み取ることができます。

直近2年間のガス価格の変遷 (出典:etherscan.io)

燃料価格の短期変動が激しいことも確かですが、この2年間のガス価格(単価)が15⇒106 Gweiと7倍に高騰していることが分かります。この単価上昇が経費として跳ね返ってきます。

ガス代の事前見積り

総額いくらの経費が掛かるのか、見通しなしにethereumで取引を始めるのは危険なので、事前の見積りが重要になります。「Gas Now (https://www.gasnow.org/)」を使うと、現状のethereum混雑度に応じた適正ガス代を予測することができます。

ガス消費量は、処理内容の複雑さによって変わるので、ここでは大手NFTマーケットプレースOpenSeaでのNFT(ERC721)トランザクション処理のガス代を予測してみます。

OpenSea経費のガス代消費予測(「Gas Now」よりOpenSea関連のみ抜粋)

OpenSeaでユーザーがNFT作品を最初に売る時、ワンタイムの経費「Register Account (NFTユーザーアカウント登録料)」が掛かりますが、この処理だけで約11,226円掛かるという見積りです。

このNFTアカウント登録料を、前述したガス代計算式に当てはめてみると、
389335(Gas)×83(Gwei)×10-9 (ETH/Gwei)×347365.7(円/ETH) ≒ 11,226円
と予測値を得ることができます。

「Buy NFT (NFTを買う)」欄はNFT作品購入の都度掛かる経費を表していますが、これも約5,475円と高額です。「Post NFT (NFTを売る)」欄がゼロ円なのが不思議に感じますが、これはOpenSeaのビジネスモデルの場合、NFT作品の一次販売はOpenSea内クローズドで行われるのでethereumとのやり取りがなく経費が発生しないためです。実際に一次販売が成立したとき、初めてNFT作品の所有情報がethereumに記録されます。この時の経費は「Buy NFT (NFTを買う)」欄で示した額を買い手が負担します。

取引をキャンセルしたい場合、ethereumを取引前の状態にロールバックさせる必要があれば、この処理だけで 2,147円の経費が必要になります。「OpenSea」に含まれない「ETH」行の605円とは、NFTに限らずethereumへの送信経費として掛かる金額です。

ガス代上昇によって何が起きるのか?

前述のようにガス代が高騰している根本原因は、ethereumの処理能力がニーズに追い付いておらず、トランザクションの混雑が解消していないのが要因です。つまり処理遅延が慢性的に発生しています。

ethereumが混雑しているので、ユーザーはやむなく高額マージン分を含むガス価格単価を懸賞金としてマイナーに提示し、自分のトランザクションを他よりも優先して処理して貰おうとします。マイナーがどのトランザクションを優先して処理するか、今はマイナーが選り好みできる状況なので自己の利益を最大化するため、なるべく高額マージン設定のトランザクションから優先的に処理します。

他方、ユーザーから見るとNFT発行に必要なガス代がワンタイムのユーザー登録で1万円・NFTを買う時、都度5千円も掛かります。そのため今はユーザーにとって「試しにNFTを発行してみよう」と安易に思えるような状況ではありません。掛かった経費はNFT作品の売却価格に転嫁する必要があるので、安いNFTアイテムを売却していては元が取れません。高額でのNFT売買成立が見込めない大多数のユーザーにとって今は赤字リスクが高い状況です。

ガス代高騰に対する回避策とは?

高いガス代を払い続けたいと思うユーザーはまずいないでしょう。また、ガス代高騰によりユーザーのethereum離れを招いたらETH資産を大量保有する有力機関にとっても価値棄損になるので、ガス代高騰問題の根幹である混雑解消を図ろうとしています。

これら異なる立場の者の思惑により、以下のような動きが現れています。

《方法1》シャーディング(並列処理)

ethereumの処理性能が上がればユーザーはガス価格に高額マージンを設定する必要がなくなり、ガス代が下かります。

この考え方に基づいて現在開発が進められているのがEthereum2.0です。

その中でも性能向上につながる並列処理は「シャーディング」と呼ばれる技術で、Ethereum2.0 Phase1開発スケジュールに盛り込まれています(2022年開発開始予定)。

ただ、実際に一般のユーザーが恩恵を受けられるようになるリリース時期は早くても2022年後半見込み、ethereumの混雑は暫く続きます。

シャーディングを実現するには、それに先立ち現在のEthereum1.0で採用されている承認アルゴリズムPoW(プルーフオブワーク)をPoS(プルーフオブステーク)に変更する必要があります。PoSはEthereum2.0のPhase0という位置付けで開発されており、2021年12月にPoWを実質凍結させるアップデートが予定されています。ただし開発は遅延傾向のようです。

PoWは最速でマイニングを完成させた勝者1名だけが手数料を総取りする、単純明快な承認アルゴリズムです。勝者以外の計算結果は全て破棄され、ethereumトータルで見た性能はわずか1名分の処理能力しか発揮されていません。

これに対し、PoSは計算競争の1等賞を決めるのではなく、ETHを大量保有してデポジットしていることを前提条件に1名~数十名を抽選で決めます。

Ethereum2.0にはマイナーと呼ばれる役割の者が存在しません。役割・作業・報酬をEthereum1.0のケースと対比させると次のようになります。

PoS+シャーディングでは勝者が複数人になるので、この複数人で分担してトランザクションを並列処理します。ethereumの計算能力が並列度に応じて向上するので、混雑が一気に解決することになります(64並列化が予定されています)。

《方法2》L2サブチェーン

シャーディングによりガス代高騰が根本解決するのはまだ先の話なので、ユーザーは当面、どう経費削減するか考えなければなりません。その1つの答えがレイヤー2ソリューションです。

これはethereum上の取引が処理能力不足により処理遅延・経費高騰を起こしているので、別の迂回ルートを使って一連の取引を終わらせ、再びEthereum取引にもどって来ようという考え方です。

ethereumを高速道路(メインネット)だとすれば、高速へ乗り降りできる一般道(サブチェーン)に降りて移動し、目的地付近で再び高速道路へ戻って料金を節約しようとする考え方です。

ethereum外の取引なので、L2サブチェーンはethereumの処理遅延・経費高騰に悩まされることがありません。ただしこれを行うには、マーケットプレイスがL2サブチェーン取引に応じてくれる必要があります。

下記のように、いくつかのサブチェーンが運営されています。(カッコ内は通貨呼称)

Polygon (MATIC)
Arbitrum (ARB)
Optimistic Ethereum (ETH)

一番普及しているのはPolygonで、ethereum取引を行うほとんどのNFTマーケットプレイスが対応しています。

サブチェーンでは1ドル未満の低価格経費で瞬時に取引できるので、何度もトランザクション発行が必要な場面でもストレスなく取引できます。

ただしethereum上の資産をこれらサブチェーンへ移す時は、使用しているウォレットのアカウントからトークンブリッジと呼ばれる資産スワップ処理する必要があります。

例えばethereumメインネットからOptimistic Ethereumサブチェーンへの入金は20分程度の承認時間・手数料は5ドル程度を要するだけですが、その逆方向、Optimistic Ethereumからethereumメインネットへの出金は、結局ethereumの混雑に巻き込まれるので1週間程度の時間が掛かり、ethereumの高額手数料が発生します。またL2ソリューションは、まだ日本の取引所での扱いがないので海外ウォレット経由で使用することになります。

《方法3》L1互換チェーン

混雑の続くethereumを使わず、ethereum同様に扱える別のブロックチェーンを使って取引しよう、というのがL1互換チェーンです。ethereumとは無関係なので、ethereumの処理遅延・経費高騰の影響を受けることがありません。

この取引の場合、売買するNFTマーケットプレイスがL1互換チェーンに対応している必要があります。

Solana (SOL)
Polkadot (DOT)

しばしば「ethereumキラー」という異名で呼ばれるSOLが代表的なL1互換チェーンです。ただこれも残念ながら国内取引所の扱いがありません。なお、既にSOLを扱える海外のNFTマーケットプレイスMetaplexが存在しています。ethereum代替えを目論むSolanaでは、ethereum上のNFTをSolanaへ移す「ワームホール」というプロジェクトも存在します。Solana上のNFTはSPLアセットと呼ばれますが、ethereum上のNFTをバーンしてSolana上にNFTを新規登録するという方法で移行することが可能で、逆にSolana上のNFTをバーンしてethereum新規登録する手続きも可能です。これにより、利用しなくなったブロックチェーン上のNFTを放置しなくて済みます。

Polkadot(ポルカドット)にも注目が集まっています。Polkadotは、ethereumのロードマップ上にあるWeb3.0の分散取引所を先行実現しようとする取り組みです。既にPoS承認アルゴリズム・シャーディングによる分散処理が機能しています。異なるブロックチェーン同士をブリッジにより相互運用できる特徴も持っています。Polkadotの仮想通貨DOTに関しては、国内取引所でもGMOドットコイン・SBI VCが取り扱いを開始しており、監督官庁の金融庁が信頼性にお墨付きを与える形になっています。ただしDOTは時価総額がETHのまだ1/10以下、まだまだこれからの仮想通貨です。

また詳細情報不明ですが、国内取引所でも扱われているリップルコインもDeFiやNFTといったスマートコントラクトを動作可能なethereum互換のサイドチェーン(L2サブチェーンに近いもの)を実装予定との発表をしています。

まとめ

以上のように現状のethereum利用は高額経費が発生するので、売買対象の相場だけに注意を払うのではなく、ガス代を含む総額を事前見積りして、納得した上で取引を始めることが重要です。

またこれまでの説明により、ethereumが時代遅れになったと感じるかも知れませんが、スマートコントラクトが使えるethereum以外のプラットフォームで採用されるガス代低減技術は、ethereumの開発ロードマップに既に載っている折り込み済の技術です。ethereum開発が進めばガス代は劇的に低減します。その時、他のL1互換チェーンにはethereumとは異なる存在意義・役割が求められ、淘汰が起きる可能性もあるでしょう。

今後もこちらでは、NFT関連の役立つ情報をお届けしていきます。NFTや暗号資産など、ブロックチェーン技術にご興味のある方は当社に是非ご連絡ください。

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