これだけは守ろう!ブロックチェーンゲームでNFTを景品として取り扱う時の注意点

これだけは守ろう!ブロックチェーンゲームでNFTを景品として取り扱う時の注意点

最近、NFTアイテムが獲得できる海外ゲームサイトの話題をネット上で見かけることが多くなりましたが、日本国内でそういったブロックチェーンゲームのサービスを展開しようとした場合、どのような点に注意する必要があるでしょうか。
今回は、日本国内のブロックチェーンゲームでNFTを景品として取り扱う際の注意点を考えていきます。

ブロックチェーンゲームの景品と日本国内法の関係

ベトナムのSky Mavis社が提供するAxie Infinityというブロックチェーンゲームは、仮想通貨や法定通貨を賞金・景品として提供しています。もし日本国内でこのままサービス提供すると、賭博罪・特定商取引法・景品表示法・金融商品取引法など、数々の法に触れる恐れのあるサービスですが「運営会社が海外法人、サービス提供サーバーが海外に存在、外国人が海外からゲームサイトにアクセスする」という条件なら日本国内法に触れる可能性はありません(法規制・税制は別問題)。

そんな中、日本国内では(社)ブロックチェーンコンテンツ協会 https://www.blockchaincontents.org/ により日本国内法や行政パブリックコメントに抵触しないブロックチェーンゲームのあり方が検討され始めています。

ブロックチェーンゲームのマネタイズ

国内に限らず、海外でのブロックチェーンゲーム運営側が利益を得る場面として、

  • ゲーム内で使用する課金アイテムをNFTとして売買する
  • ゲーム勝敗の懸賞金を仮想通貨で得る

が挙げられます。NFTアートなど、NFTアイテムは一旦購入されると値上がり等により転売成立まで売買機会が発生せず一般的に流動性が低いですが、ゲーム内での実用アイテムであるNFTの場合、ゲーム内で課金アイテムを取引すれば、NFTはただのデータではなく必要に応じて使用する実用アイテムになるので売買流動性が上がると言われています。

しかし売買流動性が上がりNFTアイテムの換金性が高まると、日本国内法ではNFTアイテムが金融商品や仮想通貨同等であると見なされる可能性が上がり、金融取引の関連資格が必要になる可能性が出てきます。

NFTが有価証券だと判断されると厳格な管理が必要

日本国内法では、仮想通貨は金融商品に該当するため「資金決済法」での「仮想通貨交換業登録」の許認可を受けた業者しか取り扱いできません。他方、国内法では、NFTアイテムが「金融商品取引法」での有価証券に該当するか明確な基準はなく、個別ケース毎に判断されます。有価証券でないと判断されれば、金融庁による監督・規制対象から外れます(ただし、その場合でも消費者庁による「ガチャ」監視は行われる)。

NFTアイテムが暗号資産に該当するかはケースバイケース

仮想通貨・NFTの取引について金融庁の見解を具体的に見てみましょう。金融庁ホームページ「暗号資産に関連する事業を行うみなさまへ」https://www.fsa.go.jp/policy/virtual_currency/index_2.html にある、「事務ガイドライン第三分冊:金融会社関係、本文」https://www.fsa.go.jp/common/law/guide/kaisya/16.pdf によれば、1号暗号資産(ビットコイン・イーサなどの仮想通貨のこと)・2号暗号資産(1号暗号資産と同等の経済的機能を有するもの)の二種類が規定されており、これらは両者とも資金決算法で仮想通貨の扱いです。
しかし、日本には2号暗号資産に対する要件定義がないため「NFTアイテムが2号暗号資産に該当するかどうか」はサービス形態によりケースバイケースで判断されます。

NFTアイテムが暗号資産に該当するかの判断材料

前出の金融庁「事務ガイドライン第三分冊:本文」に対するパブリックコメント(民間からの意見・疑問点に対して行政側が回答する)が提示されています。

2019(令和元年)年9月3日「別紙1」の「事務ガイドライン(第三分冊:金融会社関係 16仮想通貨交換業者関係)」https://www.fsa.go.jp/news/r1/virtualcurrency/20190903-1.pdf に、仮想通貨の範囲・判断基準が示されています。

「いわゆるDapps(注:ブロックチェーン上で動作する取引アルゴリズム)がERC 721形式(注:NFTのこと)でゲーム内での固有トークンを発行することに対して何か法的な規制はあるか」との質問に対し、金融庁は、

資金決済法第2条第5項に規定する仮想通貨 の該当性については、法令に基づき、実態に即して個別具体的に判断されるべきものと考えております。ご指摘のトークンが仮想通貨に該当し、その売買等を業として行う場合には、仮想通貨交換業者としての登録を要し、法令に基づく必要な規制を遵守する必要があります。

つまりNFTアイテムをゲームサイトがどう取引するかにより、2号仮想通貨(2号暗号資産)に該当するかどうかが判断される、と回答しています。さらに、

ブロックチェーンに記録されたトレーディングカードやゲーム内アイテム等は、1号仮想通貨と相互に交換できる場合であっても、基本的には1号仮想通貨のような決済手段等の経済的機能を有していないと考えられますので、2号仮想通貨には該当しないと考えられます

とも回答していることから、NFTを発行するサイトが、決済手段等の経済的機能を有しているか?を判断材料に該当するかどうかを決めているとのことです。注意が必要なのは金融庁回答が「NFTは2号仮想通貨(2号暗号資産)には該当しない」と無条件に言っている訳ではないことです。つまりブロックチェーンゲームのサイトにNFTアイテムの取引機能があり、仮想通貨同様の取引業を行っていれば2号暗号資産の取引と同等と判断される可能性があります。もしゲームサイトが仮想通貨交換業として登録されていなければ、違法営業に相当します。

パチンコの三店方式と同じと考えてはいけない

では、個人的に獲得したNFTアイテムをゲームサイトとは無関係に市場売買すれば合法では?という気がしてきます。似た業態として、風俗営業の7号営業に相当する「パチンコ屋」の三店方式があります。つまり、遊技の景品を提供するパチンコ屋の隣に、景品を高額現金買い取りする古物商が存在するというグレーゾーンのビジネスモデルです(いわゆる「三店方式」は業界用語で、警察庁が公認した営業形態ではない)。ただし、パチンコ屋は風俗営業適正化法 https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=323AC0000000122 の風俗営業の4号営業として指導を受けながら営業しているので今のところ問題化されていません。

ブロックチェーンゲームは別のルールが適用される

当然、ブロックチェーンゲームの場合、風俗営業とは別のルールが適用されます。個人的に取得したNFTアイテムをオープンな市場で第三者へ市場適正価格で売買する場合は別ですが、もしそのNFTアイテムを買い取りするのがブロックチェーンゲーム関係者の場合、風俗営業ではないブロックチェーンゲームサイトがいくらパチンコ屋の三店方式と同じだ、と主張しても通用しません。これは風俗営業に指定されていない違法カジノが三店方式まがいを行ったら摘発されるのと同じ理屈です。ブロックチェーンゲーム運営側が三店方式まがいを行うと賭博場開帳図利罪に当たると見なされても文句が言えません。

クレーンゲームの景品みたいな簡単な話でもない

では、NFTアイテム売買がパチンコ屋の三店方式に相当しないとすると、景品のNFTアイテムはゲームセンターのクレーンゲームのぬいぐるみのような扱いを受けるでしょうか?これも該当するとは言えません。

風俗営業の8号営業に指定されているゲームセンターは、景品の提供が原則禁止されています。原則と言っているのは例えばクレーンゲームで、小売価格がおおむね800円以下のものを提供する場合、遊技の結果に応じて商品を提供することには当たらない、との解釈基準が警視庁から示されているからです(7-(3)-カ)。https://www.police.pref.kanagawa.jp/notice/pdf/d00031.pdf つまり、高額商品を提供するクレーンゲームは、営業形態に関係なく存在そのものが風営法上の商品提供罪に当たると解釈できます。ただし、ネットワーク上のブロックチェーンゲームをゲームセンターと同じ業態だとは扱えません。午前0時までの営業時間制限・学校施設からの設置距離制限・射幸心を煽る遊技をさせない、といった風俗営業としての要件があるゲームセンターを、ネットワーク上のゲームサイトと同じ風俗営業の8号営業だと解釈するのには無理があります。そのため商品が800円以下かどうかは、ネットワーク上のブロックチェーンゲームの適法・違法の判断材料にはなりません。

ソーシャルゲームの課金アイテムに考え方は近い

では、ソーシャルゲームで景品アイテムを得るのと、ブロックチェーンゲームでNFTアイテムを得るのは同じでしょうか?どちらも現状では風俗営業の適用外であり、ネットワーク上のブロックチェーンゲームは設置場所等の要件がないソーシャルゲームの営業形態に近いと言えます。

ソーシャルゲームでの射幸心を煽る問題(いわゆるガチャ)はゲーム性と同義であり、これまでもしばしば社会問題視されています。2012年5月には当時の松原仁 消費者担当大臣が「ソーシャルゲームは射幸心を煽り、一定の抑制的な方向性を打ち出すことは必要だろう」と発言、これを受けたグリー・DeNA等の業界団体は、法規制が始まる前に業界自主規制として「コンプガチャ」全廃方針を決めました。これにより新規の法規制導入を逃れましたが、その後もソーシャルゲームの射幸心規制を強化する議論は続いており、パチンコからソーシャルゲームへ導入された「確率変動(確変)」の問題視や、ソーシャルゲームの風俗営業適用議論が燻っています。

従って、ネットワーク上のブロックチェーンゲームへの「ガチャ」導入は国内法に触れる直接的原因になります。これを踏まえ、前出の(社)ブロックチェーンコンテンツ協会ガイドラインでの「1.賭博について」「1-1.禁止事項」での「以下の行為は行うことができないと考えます」の1項目として「NFT等その他換金性を有するゲーム内アイテムを排出する有償ガチャを行うことは賭博に該当する可能性が高いため、実施できないと考えます」と記載されています。

結局、どのようなビジネス形態が考えられる?

業界団体の(社)ブロックチェーンコンテンツ協会ガイドラインに則って営業すれば、業界団体全体が社会から非難される可能性はあるものの、特定業者だけが違法行為で狙い撃ち摘発される可能性は低くなります。

これを踏まえ、日本国内で日本人を含む顧客を対象にNFTアイテムを景品として提供するオンラインゲームは、ガイドラインに従い以下のような点に留意して営業する必要があります。

  • NFTアイテム獲得につながるガチャをゲームに導入しない、ゲームはプレーヤーの入力条件に対し確定的な振る舞いを行う。
  • NFTの課金アイテムをゲームサイト内で売買できないようにする。NFTアイテム売買は全てゲームサイト外の市場・対個人で行う。
  • 「射幸心を煽る」高額アイテムを、ランキングイベント等での賞金・商品として提供しない(上記ガイドラインの場合、「不当景品類及び不当表示防止法」で定められた上限を超えない範囲、と表記してあり、掛け金に応じて提供可能な商品金額が制限される)。
  • 提供したNFTアイテムに対する相場操縦的行為を市場で行わない(三店方式まがいを行わない)

まとめ

まず、オンラインカジノ合法化が進む規制解除方向のいくつかの国と、ソーシャルゲームでの消費者保護問題により規制強化が進む日本国内では、状況が異なることを意識する必要があります。国内の場合、NFTアイテムについて消費者庁・金融庁・警察庁がようやく連名で注意喚起を出し始めた段階です。ただし、厳しい日本の法規制をクリアできれば、どこの国を相手にしても通用する質の高いサービスが提供可能でしょう。そのためには、射幸心に頼る消費者が飽きてしまうような退屈なゲームではなく、プレーヤーが楽しいと思えるようなゲームを提供した上で、デジタルトレカ等の記念品レベルのNFTアイテム提供を行うサービスが望ましいと言えます。合法的なブロックチェーンゲームであれば、今までとは異なり日本の消費者も安心してプレイ可能になります。

今後もこちらでは、NFT関連の役立つ情報をお届けしていきます。NFTや暗号資産など、ブロックチェーン技術にご興味のある方は当社に是非ご連絡ください。

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