PLATEAU応用の情報サービス可能性とは?

PLATEAU応用の情報サービス可能性とは?

PLATEAUとは国土交通省主導で進められているプロジェクトで、日本全国の都市の街並みが3Dモデル化され、オープン情報・フリー情報として提供されます。単に現状の都市を3Dモデル化することが目的ではなく、民間企業・市町村がローカルに持っているデータをこのモデルの持つ地理情報に紐づけることでデータベース化し将来の街づくりに活用するボトムアップ型・オープン型のGIS(Geographical Information System 地理情報システム)構築を目指しています。
民間活力を生かそうというプロジェクトなので、PLATEAUを再利用するのに必要なデータ・ツール・利用ノウハウが広く一般公開されています。
Googleの行っているような地理情報に紐づくビジネスは、システム基盤作りやデータ更新に膨大な開発コストが掛かることからこれまで他社が手を出しにくい分野でしたが、PLATEAUの利用によってGoogleに対抗するような有償サービス立ち上げの可能性が出てきました。

本稿ではPLATEAUにより提供されるデータの質や条件などを紹介すると共に、最後にPLATEAU利用サービスについても考察します。

PLATEAUの都市3Dデータを見てみる

まず実際にどのような都市データが提供されているのか見て行きましょう。

PLATEAUが扱う3D都市モデルは、CityGML・FGDB・3D Tiles・OBJ・FBXの各フォーマットで配付されています。

No.フォーマット名説明扱える主要ツール
1CityGMLPLATEAUデータ管理のネイティブ形式
(XML拡張形式)
2FGDB
※ファイルジオデータベース
地理空間情報データ形式ArcGIS (esri社)
https://www.esri.com/ja-jp/arcgis
33D Tiles地理空間情報データ形式
(地理・CADモデル・写真測量、等の統合管理)
Cesium (Cesium社)
https://cesium.com/
4OBJ汎用3Dモデル形式
(変形しない立体物用)
Blender・Unity・Unreal Engine等
5FBX汎用3Dモデル形式3dsMAX・MayaなどAutoDesk社製品と、互換フリーツール
PLATEAUが提供するデータの各種フォーマット説明

PLATEAUはCityGMLというあまり聞き慣れないフォーマットを使って元データを管理していますが、その中身はXML形式を拡張した、建物・街路・橋梁等の個別形状情報と地図・用途・構造・築年等の属性を紐付けた大規模データです。

XML形式なので、新たなデータを情報追加するのに向く構造になっています。

CityGMLの他、汎用3Dエディタと地図作成システム向けのフォーマットデータも提供されています。

PLATEAUの基本となる3D立体モデルの出来栄えを紹介するため、この記事では広く普及しているOBJフォーマットデータを汎用3DエディタのUnityで表示させてみます。

PLATEAUの3D都市データは「G空間情報センター」から配付されています。今回サンプル描画した新宿副都心の超高層ビル群エリアのOBJファイルは、「3D都市モデル(Project PLATEAU)東京都23区(OBJ 2020年度)」のページからダウンロードできます。( https://www.geospatial.jp/ckan/dataset/plateau-tokyo23ku-obj-2020 )

都市モデルデータのダウンロードページ

探しているファイルを見つけるため、この「東京都23区構築範囲図」から該当地域がどのファイルに含まれているかを調べます。

東京都23区構築範囲図

この「範囲図」から探している地域のデータがファイル「533945」に含まれていると分かるので、上述「3D都市モデル(Project PLATEAU)東京都23区(OBJ 2020年度)」のページから、リンク「533945」に紐づいているファイル533945_2.zipを入手・解凍しておきます。

このファイルだけで圧縮状態で500MB以上あるので、全部Unityで表示させるのは負荷が掛かります。今回は、より詳細な「東京都23区構築範囲拡大図1/4~4/4」を参照して、実際に表示させる新宿副都心の超高層ビル群のエリア「533945_2\LOD2\53394535」だけを読み込みます。

このLOD(Level of Detail)という基準は、CityGMLフォーマットが定めるデータ詳細度を表す指標で、新宿副都心超高速ビル群の場合「LOD2」レベル、つまり表面テクスチャ画像付きデータが提供されています(構築範囲図のピンク色表示エリア)。

2020年分公開時点ではLOD1・LOD2レベルの2段階のみデータ提供されています。

LOD概念(「先端測量技術」No.115 2021年12月より)

※参考資料:(公財)日本測量調査技術協会「先端測量技術」No.115 2021年12月「Project PLATEAU(プラトー)の課題と展望―測量技術の観点から」内山 裕弥 https://sokugikyo.or.jp/pdf/apa115_2021_12/115-koen1.pdf 

Unityエディタを用いて3Dプロジェクトの新規作成後、入手済の新宿副都心3D都市モデル「533945_2\LOD\533945\53394535」をそのプロジェクトのアセット(資産)としてUnityに取り込み、シーン画面上に表示させると次図のようなビル群の3D表示が現れます。建物形状に特徴のあるコクーンタワー・新宿住友ビル(住友三角ビル)等、超高層ビル群が表示されているのが分かります。

PLATEAUの3Dモデル表面に張られているテクスチャは、市町村が持つ航空写真データが利用されており、極めてリアルな外観が得られます。

UnityでPLATEAUの3D都市モデル「53394535」エリアを読み込む

PLATEAUとGoogle Earth Proの比較

ほぼ同一画角のGoogle Earth Proによる描画

PLATEAUとよく比較されるサービスとしてGoogle Earth Proがあり、上図のように3D都市描画させると見た目がよく似ています。Google Earth Proのデータは、地区一帯が融合した立体物としてモデル化しており、隣の建物・鉄道など全てが分離不可能な1体データになっています。

これは今回取り上げたPLATEAUのOBJファイルについても事情が似ており、区域「53394535」はOBJファイルとして全体が1個の立体物として造形されている点で大きな違いがありません。

OBJ化された「53394535」は全体が1個の立体物

一番の違いは、Google Earth やGoogleストリートビューのデータがユーザーの再構築・商用利用を禁止しているのに対し( https://www.google.com/intl/ja_ALL/permissions/geoguidelines/ )、PLATEAUの3D都市モデルデータは非常に緩い利用許諾条件下で複製・変形・商用利用が許可されている点です。事前利用手続きも不要です。(サイトポリシー: https://www.mlit.go.jp/plateau/site-policy/ )

情報更新の必要上、GoogleもPLATEAUと同様に何らかの地理空間情報データシステムで元データを管理し、それを元データとしてスナップショットのGoogle Earth Pro表示用3Dモデルを生成していると思われます。しかしその存在するであろう元データは一般ユーザーへ公開されていないのでGoogle外の人間が内容を伺い知ることはできません。

これに対しPLATEAUの方は、地区全体が一体のOBJデータだけではなく、元データのCityGML自体が一般公開されています。CityGMLデータは各市町村が持つ「都市計画基礎調査」の結果を元に建物・街路・橋梁などの構造物を個別に分離させている、用途・構造・築年等の属性が紐づいている大規模データです。

権利関係が緩いPLATEAUは3D都市モデルに自分独自の追加情報を紐づけることができ、再開発後の都市景観・災害発生予想など、現状都市をそのまま表示だけでなく各種シミュレーション結果を表示可能にするシステムです。

CityGML上の最新成果を汎用3Dツールで利用できるようCityGML⇒OBJフォーマット変換するPlateauCityGmlというツールも提供されています

( https://github.com/ksasao/PlateauCityGmlSharp )。

まとめ

PLATEAUは今のところ防災情報・統計情報など市町村主導の都市づくりプロジェクト利用が中心ですが、これだけ質の高いデータを無償利用できることから、建築関係・設備関係企業など民間でも利用が進んで行くと思われます。例えば広告看板の効果確認・屋外大型ビジョンの見え方などを設置前に検証するなどの利用方法が考えられます。

また非常に緩い利用許諾条件で提供されているOBJファイル、FBXファイルなどの3Dデータは、そのまま都市を造形した3Dモデルなので、任意の3Dデータを組み合わせることで容易にフルダイブ型のメタバース空間を作成できます。例えばメタバース内に営業セミナー会場を設けてサービス提供したり、自動車ディーラーが仮想世界でのショールーム設営や試乗会を開催したりするなどの用途が考えられます。

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