Yahoo(ヤフー)は9月10日、グローバルファッションブランドのレベッカ・ミンコフ(Rebecca Minkoff)とのNFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)コレクションを開始しました。アメリカの主要ブランド初のNFTとして、注目されています。
この記事では、レベッカ・ミンコフのNFTコレクションの概要と、世界で増加するファッションブランドのNFTの事例、NFTでファッションクリエイターを支援する事例をご紹介します。
レベッカ・ミンコフのNFTとは?
レベッカ・ミンコフは、レベッカ・ミンコフ氏とウリ・ミンコフ氏の兄妹によって2005年にニューヨークに設立されたブランド。今回のNFTコレクションはニューヨークファッションウィークに合わせて公開され、モバイル端末とデスクトップでの利用が可能となっており、AR(拡張現実)に加えてフォール/ホリデーのルックのNFTが公開されました。
レベッカ・ミンコフとヤフーは、このNFTコレクションを通して、ユーザーをニューヨークをモデルにしてつくった街に連れていくとしています。街中ではたとえば、ニューヨークの人気エリアであるSOHO(ソーホー)などを自由に散策しながら、レベッカ・ミンコフの最新コレクションを身にまとったモデルの2D写真を見られるようになっているとのことです。
世界ではファッションブランドのNFTが増加中
アメリカだけでなく、世界ではファッションブランドのNFTが増加しています。ここでは、有名ファッションブランドの3つの事例を見ていきましょう。
グッチ
1つ目の例として挙げられるのが、Gucci(グッチ)です。新進気鋭のNFTブランド「RTFKT(アーティファクト)」のNFTスニーカーコレクションが310万ドル(約3億5,000万円)で落札されて話題となったとき、グッチもアバター向けのデジタルスニーカー「GUCCI Virtual25」を発売していました。しかし、当時はまだNFT市場に参入していませんでした。
その後、グッチ初となるNFT作品「プルーフ・オブ・サブランティ(PROOF OF SOVEREIGNTY)」をイギリスのオークションハウスクリスティーズに出品。このNFTは、グッチの最新コレクション動画「グッチ・アリア」で使用したデジタルアニメーションをベースにしたアート作品となっています。入札開始価格は2万ドル(約220万円)ですが、収益の全額を米ユニセフに寄付し、途上国への新型コロナウイルスワクチン分配に充てると公表していました。
カール・ラガーフェルド
2つ目の例として挙げられるのが、カール・ラガーフェルド(KARL LAGERFELD)です。カール・ラガーフェルドは、2019年2月に亡くなったドイツ出身のファッションデザイナーであるカール・ラガーフェルド氏が創業したファッションブランド。
同ブランド初のNFTコレクションは、ラガーフェルド氏の誕生日である9月10日にリリースされました。ファッション関連のNFTマーケットプレイス「THE DEMATERIALISED」と提携し、今後ブランドオリジナルのNFTコレクションを展開していくと公表しています。
その第1弾となる今回のコレクションでは、最新テクノロジーやそれによってもたらされる文化的影響に常に強い関心を抱いていたラガーフェルド氏へのオマージュとして、以下の2種類のバーチャルフィギュアが登場しました。
- ICONIK KARL:アイコニックなラガーフェルド氏の容姿をアニメのキャラクター風に再現したもの。販売時はラガーフェルド氏が好んでいた黒いスーツを纏っているが、購入者は今後順次発売されるアイテムを使い、コーディネートを変更できる。777個限定
- CHROMATIK KARL:ICONIK KARLとは対照的にオールブラックのクロム仕上げが特徴のコレクターズアイテム。メタリックな近未来の空間のなかで光を放つ姿は、ラガーフェルド氏が創り出した世界に浮かんでいるかのような不思議な存在感を表現している。77個限定
ルイ・ヴィトン
3つ目の例として挙げられるのが、ルイ・ヴィトンです。ルイ・ヴィトンは8月4日、スマートフォン向けNFTゲーム「LOUIS THE GAME」をリリースしました。LOUIS THE GAMEは、ブランドのマスコットとして愛されるヴィヴィエンヌが、ルイ氏の生誕を祝う目的地を目指して旅するストーリーとなっています。
LOUIS THE GAMEのなかには全部で30のNFT作品があり、6つあるすべてのステージをクリアした一部のユーザーからは、「NFT所有権を獲得するための抽選に申し込める」との声も上がっています。
また、30のNFT作品のうち10作品は、NFTアート業界を牽引するといわれているデジタルアーティスト「Beeple(ビープル)」のものであるとのこと。なお、アプリリリース後わずか7日間でダウンロード数が50万を突破したといわれており、その人気がうかがえます。
NFTでファッションクリエイターを支援する動きも
有名ファッションブランドのNFTだけでなく、NFTでファッションクリエイターを支援する動きも出てきています。ここでは、日本における3つの事例を見ていきましょう。
TETRAPOD APPAREL
「TETRAPOD APPAREL」は、TETRAPODが7月8日に発表したアート作品に新たな価値を付与するプロジェクト。「NFT」「アート」「アパレル」「スペース(展示空間)」の4つを融合させているのが特徴です。TETRAPODは、”アートと社会の接続をテーマに多様な関わりしろの創造”を目的に発足したアートプロトタイピング集団です。
TETRAPOD APPARELの仕組み(出典:TETRAPOD)
TETRAPOD APPARELでは毎月4作品をNFT化し、NFTとリンクされたQRコードを添付した衣服を販売するとしています。アーティストごとのNFT発行上限は11までで、OpenSeaでの売買も可能になるとのこと。NFTにより持ち主であることが証明できるため、品質や形状がアップデートされた製品を差額購入できる点も、TETRAPOD APPARELの特徴だとしています。
1SEC
株式会社1SECは4月28日、ブロックチェーンゲームやNFTサービスの開発を行うCryptoGames株式会社が提供する「NFTStudio OEM」初のデジタルファッションパートナーとして、提携することを発表しました。
1SECは、米国のロサンゼルスと東京に本拠を持ち、XR事業のソフトウェア開発や、ブロックチェーンコンテンツの開発プロデュースを手掛ける企業。1SECは2021年4月に日本初のバーチャルスニーカーを全世界でリリースし、販売開始9分で5イーサリアム(約140万円)にて完売するなど、デジタルファッション分野におけるNFTの活用を推進してきました。
今回のCryptoGamesとの提携により、1SECが展開するデジタルファッションレーベル「1Block」にて、バーチャルスニーカーをはじめとしたデジタルファッションの開発・NFT発行・販売までの一貫したプロデュースが可能になるとのことです。
TOMO KOIZUMI
ファッションブランド「TOMO KOIZUMI」は8月31日、コインチェック株式会社とデジタルファッションハウスのJoyfa(ジョイファ)とNFT事業において連携を開始することを発表しました。日本のファッションブランドがNFTに関する取り組みを表明するのは、今回が初めてだとしています。
TOMO KOIZUMIではこれまでに、世界的に有名な女優やアーティストから依頼を受け、カスタムメイドのコスチュームも多く手掛けてきました。コインチェックが提供するCoincheck NFT(β版)は、NFT取引の課題とされてきたネットワーク手数料(通称Gas代)の高騰や複数のサービスを介した難しい取引などの解決を目指したNFTマーケットプレイス。サービス開始から2ヶ月で2.5万人以上が利用しているようです。
ジョイファは最先端のAI・CG技術を元に、デジタルファッションを実際に着ているかのように写真上で表現するサービスを開発しています。今回3社は、TOMO KOIZUMIのドレスコーディネートをデジタル化し、Coincheck NFT(β版)にてNFTとして販売することをはじめ、発行したNFTのメタバース上での活用など幅広く検討していく意向です。
まとめ
グッチやルイ・ヴィトンなど、世界的に知名度の高いファッションブランドがNFT市場に参入しており、それに追従するようにほかのファッションブランドも参入していることから、今後もファッションブランドのNFTが増加する可能性があります。
また、日本でもNFTでファッションクリエイターを支援する動きがあり、認知度を高めたり収益化につなげたりしたいクリエイターにとっては、活躍の場を広げるチャンスといえるかもしれません。
今後もこちらでは、NFT関連の役立つ情報をお届けしていきます。NFTや暗号資産など、ブロックチェーン技術にご興味のある方は当社に是非ご連絡ください。